(取材考記)福祉に投資、買収ファンド大もうけの現実 介護事業、経営の「見える化」早急に 大鹿靖明

 介護で大もうけができると聞いたら多くの人は驚くだろう。

 介護事業者の経営は厳しく、職員は薄給に甘んじていると伝えられてきた。そもそも介護は保険料と税金でまかなわれる福祉の領域であり、そこで「大もうけ」という言葉はそぐわないように思える。

 でも、できるのだ。外資系買収ファンドが、ニチイ学館やツクイホールディングスなど上場する介護大手を相次いで買収し、企業価値を5年で3倍にしようとしている。そんな記事を5月に書いた。5年定期預金が年利0・002%なのに、介護に投資すると元手が3倍になるというから驚きだ。

 介護事業は、最大手さえ数パーセントのシェアしかないほど中小零細がひしめく。ゆえに積極的なM&Aで規模を拡大し、スケールメリットを生かして経費を抑えると、高収益体質になるという。半面、入る金は安定している。介護が必要な高齢者は増えるから成長が見込めるうえ、介護報酬は公定価格で値崩れせず、政府が支払うので取りっぱぐれがない。

 かくして零細はカツカツでも、大規模事業者はもうかり、買収ファンドは日本の税金で巨万の富を得る。

 問題なのは、厚生労働省財務省介護事業のこうした収支構造を把握していないことである。厚労省は3年に1度の介護報酬改定の際に事業者の経営実態調査をしているが、有効回答率は50%弱。損益や貸借対照表など経営実態の精密な分析ができないのが実情だ。大手への介護報酬を薄くしてもよさそうだが、どのくらいの規模から高収益となるのか、把握するための材料も不足している。

 介護報酬の決め方を、もっとデータに基づいたものにしないといけない。財務省はやっと「見える化を」と言い始め、6月に閣議決定した菅政権の骨太方針には、介護事業者の収支の届け出とネット上における公表を盛り込んだ。私の記事を読んだ読者から、こんなメールをいただいた。「介護施設への入居を考えているが、経営状況を比較して把握するすべがない」。利用者も介護事業者の経営実態を知りたがっている。

 (東京経済部)