豪雨による災害が、ことしも7月上旬に起きた。

 広い範囲で激しい雨が降り続き、特に東海・関東地方は記録的な大雨になった。静岡県熱海市で土石流が発生し、多くの人が巻き込まれた。

 行方不明者の捜索と救出に全力をあげねばならない。地盤はゆるみ、今後も不安定な天候が続きそうだ。被災者への支援とともに、新たな被害を防ぐための手立てを尽くす必要がある。

 1年前の豪雨では、熊本県を中心に80人を超える人が命を落とした。3年前は岡山や広島、愛媛各県などを襲った西日本豪雨で、4年前には九州北部豪雨で、多数が犠牲になった。梅雨末期のこの時期は、とりわけ警戒と対策を強めたい。

 基本となるのは早めの避難である。災害時にスムーズに対応できるよう、ふだんから検討し、備えることが大切だ。

 避難のあり方は、コロナ禍で大きく変わった。以前は行政が指定した避難所へ移動することが強調されたが、「密」を避ける必要性から「分散避難」が推奨されるようになった。自宅の2階や親類・知人宅のほか、ホテルや旅館、車中も選択肢としてあげられている。

 複数の「マイ避難先」を想定し、災害時の行動を時系列で整理した「マイタイムライン」を作ることが出発点になる。

 復旧・復興への取り組みが続く豪雨被災地でも、さまざまな模索が始まっている。

 昨年の熊本豪雨で25人が亡くなった球磨村では5月、「全村民が避難について考える日」と名付けた訓練を行った。仮設か自宅か、単身か家族暮らしか、川沿いか高台か。住民の状況はまちまちだけに、一律に指定避難所へ向かうのではなく、命を守るために一人ひとりが考え、行動することを目指した。

 村は親類・知人宅などを含む避難を防災無線で呼びかけた。ある地区では住民が経路の安全を確かめてから避難し、役員が電話で安否確認を行うなど、自主的な活動もあった。

 西日本豪雨で甚大な被害に見舞われた岡山県倉敷市真備町の川辺地区では、今年5月の防災訓練で各戸が一斉に黄色のたすきを玄関先に結びつけた。避難場所にかかわらず「うちは無事」との目印とし、安否を確かめやすくするのが狙いだ。

 住民の避難行動を支えるのは、行政が発する情報である。

 熱海市の土砂災害でも、避難情報に遅れはなかったか、住民にしっかりと伝わっていたか、いずれ検証が必要だろう。5月から「勧告」が廃止されて「指示」に一本化されており、その周知の程度や有効性の分析も課題になる。