■世間の常識の一歩先を行く発想

 岸惠子さんの文章には、心地よいリズムがある。華やかな表現を時折挟みつつも、装飾のための装飾はかけらもない。読みやすさに重心を置いた、とてもシンプルな文体である。

 ただし、語っている内容はシンプルではない。本書の中に、岸さんの本質が表れていると思える挿話を見つけた…

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