(社説)延長せず閉会 国会軽視の根深い体質

社説

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 コロナ禍が国民の命と暮らしを脅かし、臨機応変な対応が求められるというのに、国会はさっさと閉じて、大事な決定はその後に行う。これでは到底、政治の重責を引き受ける政権の覚悟は伝わってこない。

 菅首相が初めて臨んだ通常国会がきのう閉会した。野党はコロナ対応などを理由に、会期の大幅な延長を求めたが、与党は取り合わなかった。

 首相は自民党が野党だった2011年5月、東日本大震災を受け「国会を閉じるなどとんでもない」とブログに記した。当時は菅直人首相に会期延長を求める運動の先頭に立っていたのに、ご都合主義が過ぎる。

 20日に期限を迎える10都道府県の緊急事態宣言。そして、開幕まで40日を切った東京五輪パラリンピック。国民生活に大きな影響を与える判断はいずれも国会閉会後となった。国民を代表する議員が政府に疑問をただし、説明責任を尽くさせる機会も奪われてしまった。

 論戦回避、国会軽視は、安倍政権から続く体質というほかない。野党の追及をかわし、言質を取られないようにすることばかりに執心し、質疑を通じて、国民の理解や信頼を得ようという姿勢はうかがえない。五輪開催をめぐり、何を聞かれても、ひたすら「国民の命と健康を守っていく」と繰り返した首相の答弁が典型だ。

 会期中、自民党に所属していた国会議員3人が、「政治とカネ」にまつわる問題で議員辞職した。カジノをめぐる収賄と証人買収の罪で公判中の秋元司・元内閣府副大臣もいる。総務省農林水産省では、幹部公務員の業界との癒着が明らかになり、国家公務員倫理規程違反で処分された。

 政治や行政への信頼を失わせる不祥事がこれだけ続発しながら、真相解明や責任の明確化、再発防止への取り組みは、とても十分とはいえない。

 前政権時代の森友・加計・桜を見る会をめぐる問題の究明も進まなかった。安倍氏は自民党内の複数の議員連盟の顧問に就任するなど、復権の動きを見せているが、国会での「虚偽答弁」ひとつとっても、納得のいく説明はなされていない。国会の行政監視機能を立て直すうえで、一連の問題を素通りするわけにはいかない。

 最近、明らかになった経済産業省と東芝の問題を含め、政府や自民党のおざなりな対応を許さぬためにも、国会は重要な役割を担っている。政府・与党は、野党が求める閉会中審査に積極的に応じるとともに、コロナ対応に遅れが生じぬよう、臨時国会の早期召集もためらうべきではない。

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