(社説)ストーカー規制 加害者対策にも本腰を

社説

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 GPS機器を使って相手の居場所を探る行為などを、取り締まりの対象に加える改正ストーカー規制法が成立した。

 これまで位置情報を無断取得する行いに関する規定はなく、警察は、禁じられている「住居や勤務先、学校付近における見張り」に当たるとして摘発してきた。ところが昨年、最高裁がこの解釈運用を否定したため、対応を迫られていた。

 技術の発達とともに、つきまといの手口も多様化している。今回の改正がストーカー行為を抑止し、被害の減少につながるよう期待したい。

 規制法は埼玉県桶川市の女子大学生殺害事件をきっかけに、2000年に制定された。その後も、メールやSNSが使われた深刻な事件が起きるとそれを規制対象に加えるといった具合に、現実を後追いする形で法整備が重ねられてきた。

 この先も現行法令で対応できない事態は起こり得る。社会に目を配り、新たな動きや兆候をとらえたらすみやかに整備に乗り出せるよう、関係機関や有識者、NPOなどによる協議の場を常設してはどうか。

 警察庁によると、ストーカー被害の相談は年間2万件超にのぼり、住居侵入、脅迫、暴行など刑法を適用したケースもあわせた検挙件数は2500件と、高止まり状態が続く。

 何より優先すべきは被害者の安全確保だ。相談窓口の拡充、避難先の確保、経済的な支援などに、引き続き力を注ぐ必要がある。初期対応の甘さが悲惨な事件につながった苦い体験を忘れてはならない。

 あわせて、加害者側に働きかけてストーカー行為をさせないようにすることも必要だ。

 警察や公安委員会から警告や禁止命令を出されても、やめられない者もいる。カウンセリングや治療を通じて過度な執着心や支配欲を弱め、取り除くことが期待されている。

 医学や心理学を用いたアプローチは、性犯罪の再発防止―更生プログラムでも採り入れられている。知見を積み重ねて有効な手法を構築してほしい。

 全国の警察は5年前から、地域の精神科医と協力して、加害者に受診を勧める取り組みを進めてきた。だが昨年の例を見ると、882人に声をかけて受診につながったのは124人にとどまる。費用は本人負担で、医療機関が限られていることなどが壁になっている。

 福岡県京都府などカウンセリングを公費で行っている自治体もある。本人だけでなく家族からの相談に乗る窓口を設けるのも一案だ。被害者が平穏な生活を取り戻せるよう「加害者対策」にも本腰を入れたい。

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