(社説)日米韓の結束 民主連合の価値自覚を

社説

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 北朝鮮による暴走の恐れと、中国による既存秩序への挑戦。二つの難題に取りくむ日本、米国、韓国は、足並みをそろえる努力を重ねることが肝要だ。

 米韓の両大統領が先週、会談した。先月の菅首相に続き、バイデン氏がホワイトハウスに招いた2人目の会談相手である。米政権が首脳外交の手始めに日韓を選んだことは、アジア重視の表れとして受け止めたい。

 北朝鮮問題について米政府は「現実的なアプローチ」と呼ぶ新政策をまとめたばかりだ。段階的な外交手法で、朝鮮半島の非核化をめざすとされる。

 文在寅(ムンジェイン)氏は歓迎し、緊密な連携を確認した。さらに両首脳は、トランプ前政権下の2018年に南北や米朝が結んだ合意や共同声明にもとづき、北朝鮮との対話を進めるとした。

 当時の米朝の声明は「安全の保証」など北朝鮮が望む内容も含む。トランプ外交を否定しつつも、バイデン政権がその引き継ぎを約束したのは、対話の呼び水として期待できよう。

 ただ、米韓は制裁緩和の時期や中身について違いもある。

 任期1年を切った文氏は、圧力の軽減が北朝鮮を軟化させると主張している。だが過去の曲折を考えれば、北朝鮮側に相応の行動がない限り、譲歩を与えるべきではあるまい。

 米朝首脳会談の可能性についてバイデン氏が、核問題について事前の協議で詰めないままではありえない、と言明したのは当然のことだろう。

 日米と同様に、米韓の間でも中国問題が焦点になった。米韓の声明も「台湾の安定」を盛り込んだが、中国の名指しは韓国側の求めで避けたという。

 北朝鮮の問題をめぐり、その後ろ盾である中国の協力も得たい韓国にすれば、対中包囲網に過度に加担するのは控えたい思惑がある。

 その微妙な差異を埋めるように、韓国企業の幹部らが訪米して巨額の対米投資を約束した。半導体の米国での生産を拡大するなど、経済安全保障での貢献をアピールした。

 安保では米国、経済では中国と、それぞれ深く結びついている現実は日韓共通だ。米中の覇権争いのなかで日米韓の協調を維持するには、ますます綿密な調整が必要だろう。

 バイデン氏は今の世界を「民主主義と専制主義」との競合とみている。その意味でも、北朝鮮と中国に向きあう日米韓の結束の価値はいっそう増す。

 3国間で、いまなお日韓だけが健全な意思疎通を欠くのは、失態というほかない。日米、米韓の首脳会談が終わったいま、残る宿題を日韓両首脳が理性をもって片付けるときだ。

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