(社説)改正少年法 不変の理念 沿う運用を

社説

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 事件を起こした18、19歳を「特定少年」と位置づけ、手続きや処遇を大人に近づける改正少年法が成立した。

 どんな名称をつけようが、教育や周囲の支えによって大きく成長しうる年代であることに変わりはない。施行が予定される来年4月以降も、少年の立ち直りを重んじる法の理念を踏まえた適切な運用が必要だ。

 今回の改正は、16年に選挙権年齢が18歳に引き下げられ、来年4月には民法の成年年齢も18歳となることに伴うものだ。

 当初、少年法の適用年齢を18歳未満とすることも検討されたが、法案提出前の与党や政府内の議論で見送られた。

 すべての事件を家庭裁判所に送り、心理や教育の専門職もまじえて生い立ちや家庭環境などを調べ、裁判官が処遇を決める基本構造はそのままだ。

 そのうえで特定少年について、家裁から検察官に送致して大人と同様の裁判を受けさせる「原則逆送」の対象となる犯罪の範囲を広げ、故意に人を死なせた罪のほかに、強盗や強制性交、放火なども加えた。

 一口に強盗といっても動機や態様は様々だ。刑事裁判を経て刑務所に収容したり執行猶予にしたりするのが妥当か、それとも少年院に入れるなどして教育やサポートを続けるほうがいいか、家裁の丁寧な審理がこれまで以上に求められる。

 19年までの3年間で、18、19歳で原則逆送事件を起こした26人のうち、7人には逆送以外の処分がされている。事件を精査し、それぞれの事情に応じた判断をしたことがみてとれる。この姿勢を堅持してほしい。

 刑法犯で検挙された18、19歳は19年に6430人で、この20年間で約4分の1に減っている。少年法は甘いといった一面的な批判を受けながら、関係者が健全育成に力を注いできた成果と評価すべきだろう。

 少年院に収容される男子全体の約3割、女子では約5割が虐待を受けた経験があるとの調査結果がある。発達障害や知的障害があるケースも少なくない。

 事件を本人の責任に帰すだけでは解決にならない。犯罪被害者の苦しみに寄り添い支援しつつ、罪を犯した少年にどうやって更生の道を歩ませ、安定した社会を築くか、多角的視点から議論を深めねばならない。

 報道も問われる。本人を推定できる記事の掲載を禁じた規定が見直され、起訴後の特定少年に関しては制約がなくなった。

 ネット時代にあって、人々の知る権利に応える責務と、少年の社会復帰に及ぼす影響とを考えながら、家裁同様、個々の事件に丁寧に向き合うなかで、判断していくことになる。

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