(社説)中国と宇宙 国際協調に責務果たせ

社説

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 中国が打ち上げた大型ロケットの残骸が、インド洋上に落ちた。被害は未確認だが、安全対策と説明責任が不十分だと、米国などが批判している。

 中国のロケットをめぐっては昨年、アフリカ西部に残骸が落ち、建物の被害などが報じられた。それだけに今回、懸念が高まったのは当然だろう。

 中国当局は「ほとんど大気圏で燃え尽きた」としたが、実際は危うい落下だったようだ。発射時の対策や落下の分析などの詳細な説明を避ける姿勢は、無責任のそしりを免れまい。

 中国は「宇宙強国」を掲げ、急速に開発を進めている。野心的な試みや高い技術を誇示するだけでなく、国際協調でも積極的な取り組みをするべきだ。

 1967年の国連宇宙条約の定めを再確認する時だ。宇宙は、人類の共益に資する開発が原則である。中国、米国、ロシアなど大国を筆頭に、改めて思い起こしておきたい。

 近年、人工物の残骸である宇宙ゴミの問題が深刻になっている。各国の人工衛星や、宇宙ステーションなどの有人施設への被害が懸念されるからだ。

 国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)は07年、ゴミを減らすためのガイドラインを作った。こうしたルールに沿って、残骸の制御措置が十全にとられねばならない。

 委員会の加盟国は発足時の1950年代に18カ国だったが、いまは95カ国にのぼる。各国の利害が一致しない事柄が増え、拘束力を伴う国際条約作りは難しくなっている。

 だからこそ、かねて開発を先導してきた米国やロシアだけでなく、中国やインドなど新興国も巻き込んだ新たな規範と原則を形作る必要がある。

 資源探査を含め、宇宙が勝手な利権争いの舞台の様相を強めれば、困るのは次世代だ。その点でも強く懸念されるのは、宇宙技術が軍事競争の最前線になっている現実である。

 軍事活動に欠かせない人工衛星を地上から破壊する兵器や、迎撃を難しくするミサイルの開発などで米ロ中が競っている。トランプ前米政権は陸海空などと並ぶ宇宙軍を創設した。

 今回、問題になったロケットは、中国独自に建設中の宇宙ステーションの中核部分を運ぶ目的だった。米当局が神経をとがらせる背景には、中国の一連の宇宙開発を軍事強国化の動きとみて、牽制(けんせい)する意図もあるとみるべきだろう。

 宇宙にまで米中の覇権争いを拡大してはならない。共に責任ある大国を自任するからには、宇宙空間の無秩序な乱用を防ぐための実効性のあるルール作りを主導すべきである。

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