(社説)育休法改正 「男性も育児」の一歩に

社説

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 男性に育児休業の取得を促すための育児・介護休業法の改正案が国会で審議中だ。与野党とも見直しに前向きで、今の国会で成立の公算が大きい。

 夫は長時間労働で、家事や育児は妻任せ。そんな社会のありようが深刻な少子化を招き、女性が望む仕事を続けることを困難にしてきた。法改正を、職場環境や社会の意識を変える契機としなければならない。

 育休は原則、子どもが1歳になるまで夫婦どちらでも取得できる。だが厚生労働省の19年度の調査では、女性の取得率83・0%に対して、男性は7・48%にとどまる。

 改正案では、通常の育休とは別に、男性向けの新たな制度を創設。子どもの生後8週までに4週分休むことができ、本人が希望すれば育休期間中に一定の仕事をすることもできる。新制度と通常の育休をそれぞれ、2回に分けて取ることも可能にする。企業には、育休の対象となる働き手への制度の周知や意向の確認を義務づける。

 柔軟な制度を用意して選択肢を増やすことで、利用を促す狙いはわかる。ただ、仕事から離れて育児に専念するのが育休の趣旨だという点も、忘れてはならない。

 田村厚労相も、新制度はあくまで、まず育休を取ってもらうことで本人や職場の認識を変え、通常の育休の普及につなげるためのものと強調している。

 新制度が乱用され、働き手の意に反して仕事をさせられたり、育休が形骸化したりすることのないよう、本人同意などの歯止めを徹底してほしい。

 育休の取得率は企業の規模によっても大きな差がある。中小企業向けの助成制度を広く知らせ、先進的な取り組み例を紹介するなどの支援も不可欠だ。

 男性が育休の取得をためらう理由で多いのが、収入が減る不安だ。政府の少子化対策でも、育休期間中の給付金の拡充が課題とされながら、財源論に踏み込めず具体化していない。引き続き検討が必要だ。

 政府は男性の育休取得率30%を目標に掲げるが、取得率さえ上がればよいわけではない。男性で育休を取得した人の36%が5日未満で、育休をとっても家事や育児をあまりしない「取るだけ育休」への不満も聞かれる。男性のための家事・育児教室を開くなど、育休の質を高めることにも力を入れたい。

 男性が家事や育児にかかわる時間が長いほど、女性が仕事を続けたり、2人目以降の子どもを出産したりする傾向があるとされる。大事なのは、日常的に夫婦が子育てや家事を共に担うことだ。男性の育休取得は、その第一歩である。

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