ニュースの向こう、記者の肉声で 朝日新聞ポッドキャスト

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 「ポッドキャスト」ってご存じですか――。朝日新聞が昨年5月に配信を始めてから1年。番組のダウンロード数は累計300万超となりました。事件、政治、経済、文化……。これまでのニュースの枠を超え、ファクトに迫る「朝日新聞ポッドキャスト」の特色をご紹介します。

 ■「ノイズ」の輝き、紙面愛読者にこそ MC・神田大介(音声ディレクター)

 もっと伝えたい。ずっとそう思ってきました。すべての記者の押し入れに、取材ノートの束があります。あれも、これも書けなかった。ニュースは多く紙幅は有限、世の習いです。

 石庭や盆栽で宇宙を表現するような職人芸もまた、記者稼業の妙味ではあります。が、ファクトを極限まで詰め込んだ新聞文体は、時に法文や教科書のごとく乾いていた。36・5度の感覚を取り戻そう。新聞社が音声配信に挑む理由はそこにあります。ラジオやテレビとも違い、ポッドキャストは尺の制限がありません。一つのテーマで20~30分、時に1時間近くにわたって記者が語ります。

 昨春のイタリアを思い出してみます。新型コロナウイルスが感染拡大の初期から猛威を振るい、医療崩壊の危機が紙面でも連日報じられました。ですが、現地から状況を伝えた河原田慎一・ローマ支局長(現・大阪社会部)の話は、予想外の広がりをみせます。イタリアは愛犬の国である。厳戒の外出制限下、警官も犬の散歩だけは黙認する。ならばと飼い犬をご近所で貸し借りし、交代で散歩を楽しむ動きが広がった――。

 ほほえましくも、不屈のしなやかさを感じさせるエピソード。今なお出口の見えないトンネルをさまよう我々に、寓話(ぐうわ)のようにも響きます。だが、不足する人工呼吸器を若者に回す「命の選別」を医師が迫られていた危機を伝える記事の中では、ノイズだった。語りには、文字と明らかに異なる表現の幅があるんです。

 国政初陣の菅義偉氏(現・首相)が記者の目前で握りつぶした敵方のメモ、陰謀論に染まったトランプ氏支持者の告白、「ひととき」の投稿を選ぶ舞台裏。署名でしか知らない記者たちが肉声で伝えます。紙面を購読して下さっている方こそが、誰よりも深く楽しめる内容です。スマホで記事を読みながら、耳で音声を聴くのも乙なもの。

 朝日新聞ポッドキャストを聴く人は、20代と30代とで6割以上を占めます。若い世代がいま何に関心を持っているか、アンテナを立てることにも使えます。

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 かんだ・だいすけ 1975年生まれ。名古屋報道センター、テヘラン支局長などを経てコンテンツ編成本部音声ディレクター。朝日新聞ポッドキャストの制作を統括、キャスターも務める。ツイッターアカウントは@kanda_daisuke

 ■「そこが知りたかった」、声に宿る体温と 愛聴する古田大輔さん(メディアコラボ代表)

 記者にとってうれしくない評価の一つに「記事より飲み屋でしゃべらせた方が面白い」というのがあります。限られた文字数で簡潔にわかりやすく書く紙面の記事よりも、感情込めて自由に話した方が伝わることもある。書く側にしてみたら切ないけれど、真実です。

 朝日新聞ポッドキャストは? こういっちゃなんですが、記事より面白い(ものもあります)。「ニュース深掘り」や「ニュースの現場から」では、記者経験の長いMCが取材した記者に尋ねるから、「そう、そこが知りたかった」というポイントをついてくる。

 答える方はウッと詰まったり、声がうわずったり。

 その感情の揺れが記者への親密感を生む。これ、音声メディアならでは。文字よりも体温が伝わるし、映像よりも想像力をかき立てます。「音でよみがえる甲子園」も、取材した記者に加えて、熱戦を繰り広げた元球児たちがこれだけの時間をとって訥々(とつとつ)と当時を語るなんて、なかなかない。こういう尺の長さも魅力の一つです。

 音声メディアは、仕事や家事の合間の「ながら聴き」ができるところもいいですね。私は毎朝、ランニングしながら世界各国のニュースを聴いています。短い時間で世界各地の状況を冷静に伝えるBBCグローバルニュースが好みです。

 「深掘り」もいいですが、音声の親密さを保ちつつ、情報のプロとして簡潔に報じる。両方を満たす番組を朝日新聞ポッドキャストには一層期待しています。

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 ふるた・だいすけ 1977年生まれ。朝日新聞社を2015年に退社後、BuzzFeed Japan創刊編集長に就いた。19年に、株式会社メディアコラボを設立。20年9月からGoogle News Labティーチングフェローなども務める。

 ■世界で広がるユーザー、市場急成長 NYタイムズ、広告収入40億円/日本でも急伸予想

 ポッドキャストは近年、世界中で利用が拡大している。

 日本のポッドキャストユーザーのうち月1回以上聴いている人は2020年時点で14・2%、国内推計ユーザー数は1100万人超とされている。一方、エジソンリサーチ社によると、米国では18年の26%から21年には41%に跳ね上がった。毎週聴くユーザーは、週平均8本を楽しんでいるという。北欧・イギリス・ドイツでも、ポッドキャストを毎週聴く人の割合が増加傾向にあるとするデータがある。

 ポッドキャスト事業を展開するアップル、アマゾンなど米大手ITや、音楽配信も手がけるSpotify(スポティファイ)などは配信コンテンツの拡充をめざし、ポッドキャスト関連企業の買収に注力。成長市場の覇権を握るべく、互いにしのぎを削っている。

 特にSpotifyは、ユーザーの囲い込みを狙い、英国のハリー王子とメーガン妃や米国のオバマ元大統領夫妻らと、ポッドキャスト番組配信の独占契約を結んでいる。アップルは5月から、ポッドキャスト上で有料課金サービスの提供を始めることも発表。フェイスブックも複数の音声サービスを実装すると4月に明らかにした。コンテンツやサービスをめぐる競争は激しさを増している。

 世界で聴かれているポッドキャスト番組の中でも、米ニューヨーク・タイムズの「The Daily(ザ・デイリー)」はトップクラスだ。20年には1日400万ダウンロードに達し、前年の2倍となった。同社も人気ポッドキャストスタジオを買収するなどコンテンツの増強に努めており、その広告収入は2020年に3600万ドル(約40億円)に上ったという。

 ネット広告業界団体IABによると、米国ではデジタル音声広告の市場がすでに3330億円規模にまで成長。日本市場でも、20年には16億円だった規模が、25年には420億円までふくらむと予測するデータもある。(中島晋也)

 ■スマホで簡単、お好みのアプリで

 ポッドキャストは、お手持ちのスマホやパソコン、スマートスピーカーなどを使って聴ける音声番組。もとは米アップル社の携帯音声プレーヤー「iPod(アイポッド)」と放送を意味する「ブロードキャスト」を組み合わせた造語で、2003年に登場。あらゆるサービスがスマホの画面を奪い合うなか、余裕のある「耳時間」の消費先となっていることが普及の背景にある。

 朝日新聞ポッドキャストは5番組(いずれも無料)を公開している。毎日午前6時に配信する「ニュースの現場から」は、世界中に散る記者たちが時事性の高い話題をリポート。「ニュース深掘り」は気になる問題の背景を読み解く。往年の高校野球名勝負を振り返る「音でよみがえる甲子園」、就職活動に役立つ「就活ポッドキャスト ニュースの使い方」に加え、人工音声で最新ニュースを届ける「朝日新聞アルキキ」もある。これらの番組は、各種スマホに対応した「朝日新聞デジタル」のアプリから手軽に聴くことができる。また、アップル、スポティファイ、アマゾン、グーグルなどでも番組を公開している。

 朝日新聞デジタルのポッドキャスト特集ページでは、番組を記事とともに楽しめる。

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