(社説)ミャンマー 地域の危機防ぐ努力を

社説

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 東南アジアに新たな人道危機を起こしてはならない。地域機構と国際社会が連携し、事態の沈静化に力を尽くすべきだ。

 国軍による市民への暴力がやまぬミャンマーが、深刻な内乱に陥る恐れが高まっている。

 市民の犠牲は700人を超えた。日本人を含む内外のジャーナリストが拘束されるなど、言論も封殺されつつある。

 国連人権高等弁務官は「シリアの過ちを繰り返してはならない」と警告した。シリアでは、政権が市民デモを武力で抑圧して内戦に発展し、約10年で国民の半数が難民となった。

 そんな悲劇の再来が心配されるほど、ミャンマーは混迷している。極めて憂慮すべきだ。

 先日、拘束されたアウンサンスーチー氏を支持する議員らが「統一政府」の設立を宣言した。国軍に対抗し、国際社会に正統な政府としての承認を求めていく構えだ。

 この政府には複数の少数民族も参加した。少数民族の地元では、自治権の拡大などを求める武装闘争が続く地域もある。国軍はそれらを空爆し、隣国への難民も生まれている。

 国軍対市民デモの構図から、二つの政府が国を分断して争う姿に変わる可能性もある。

 注目したいのは、ミャンマーを含む10カ国でつくる東南アジア諸国連合ASEAN)の対応だ。互いの内政に口をはさまないのが原則だが、先月の外相会議では複数の国が国軍の弾圧に懸念の声をあげた。

 24日にはミャンマー情勢を話し合う臨時の首脳会議を開く。クーデターを主導したミンアウンフライン国軍最高司令官の参加も見込まれる。

 深刻な人権侵害と、地域全体への脅威に対し、ASEANが多国間の枠組みで果敢に取り組むよう望む。国連特使の受け入れを国軍に促し、平和的な解決を説得すべきだ。

 司令官を協議の場に引き込むことは重要だが、外交的な待遇は慎重さが欠かせない。あくまで軍のトップで、国家の代表ではない。国軍による統治の正統性を認めてはならない。

 まずは暴力の即時停止と、拘束した政治家や市民らの解放が必須だ。同時に、民主派勢力の統一政府とも接触し、その主張を受け止める必要がある。

 内政不干渉の原則から一歩踏み出そうとするASEANの外交努力を、どう支えていくか。とりわけ、国軍を擁護する中国やロシアと米欧との対立で停滞する国連安保理が、機能を取り戻すことが重要だ。

 ASEANと関わりの深い日本も、首脳会議の結果を見極めたうえで、協力の道を探らねばならない。

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