(社説)緊急事態要請 広域で医療を支えよ

社説

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 病床の不足が深刻さを増すなか、府県の枠組みを超えて医療を支えることが急務だ。あわせて新たな感染者を抑える具体策の詰めも求められる。

 大阪府が、新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を出すよう、国に要請した。昨年4月、今年1月に続く3度目の宣言が避けられない情勢となった。

 吉村洋文府知事は、飲食店に加え、百貨店やショッピングセンター、テーマパークなど、大勢の人が集まる施設に休業を要請する考えだ。学校の一斉休校には踏み込まないが、松井一郎大阪市長は小中学校にオンライン授業への切り替えを訴えた。

 会食に伴う飛沫(ひまつ)感染を抑えることを「急所」と位置づけ、飲食店に的を絞った2度目の宣言ではなく、人の流れや接触そのものを減らすことを狙った最初の宣言時の対応に近づく。

 実際にいかなる措置をとるかは、政府との協議を経て決まることになるが、専門家の意見を聞いて、すみやかに決定・周知してもらいたい。対象となる事業者や施設への相応の経済支援策も必要となる。

 府内では、適当な転院先が見つからず、軽症・中等症者向けの病院にとどまったままの重症者が数十人にのぼる。その対応にスタッフが追われ、軽症・中等症者、さらにはコロナ以外の一般患者の医療にしわ寄せが及び、改善する見通しも立たないとの悲鳴が相次ぐ。

 大地震などが起きたときの切迫度になぞらえ、「災害級」と評する関係者もいるほどだ。

 広域支援でこの事態を乗り切るほかない。

 2度目の宣言時と同様、自治体間の調整や国の仲介で、看護師らを派遣するプロジェクトが動き出した。重症者を他府県で受け入れることも検討課題だ。近畿圏で病床に比較的余裕がある滋賀県が協力を表明した。どの自治体も管内の感染者への対応に追われる日々だろうが、一人でも多くの命を救うため、最善を尽くしてもらいたい。

 病床の逼迫(ひっぱく)はこれまでの感染拡大の際にも見られた。その経験や教訓はどこまで生かされてきたのか。またも医療の危機を招いた吉村知事は責任を免れない。変異株の脅威は昨年末から指摘されており、想定以上だったとの説明で済ませることはできない。

 同じく病床が厳しい状況にある兵庫県や、感染者の増加がとまらない東京都も、緊急事態宣言の要請を検討している。

 改正感染症法によって与えられた入院の総合調整を行う権限などを、医療現場の声を聞きながら、適切に行使して市民の命を守る。各知事、そして政府の姿勢と力量が問われている。

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