(社説)熊本地震5年 要配慮者の支援多様に

社説

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 災害が起きたとき、高齢者や障害者ら配慮が必要な人をどう守るか。対応を福祉の関係者任せにせず、地域での工夫を国が後押しして、支援を手厚く、多様にしていきたい。

 5年前、震度7の揺れが立て続けに2度観測された熊本地震では、276人が亡くなった。避難生活に伴う体調悪化などが原因の災害関連死が8割を占め、その多くは70代以上で、既往症がある人がほとんどだった。災害時の避難とその後の生活環境の変化による影響の大きさ、そして弱い立場にある人が被害を受けやすい深刻な実態が浮き彫りになった。

 災害時には、一般の避難所とは別に、要配慮者向けに福祉施設などに「福祉避難所」が設けられる。熊本地震前には、自治体が461カ所を指定していたが、震災後約1カ月間で開設できたのは100カ所余りにとどまった。

 施設自体やその職員が被災した例が少なくなかった。福祉避難所で一般の避難者を受け入れたケースもあり、人手不足に直面するなど、十分に機能しなかった。

 課題をどう克服していくか。

 熊本市は震災後、市内の特別支援学校と協定を結び、災害時に「福祉子ども避難所」を設置する仕組みを作った。在校生や未就学児、その家族らが、一般の避難所を介さず自宅から直接避難できる。障害児のいる家族が子どもの行動を心配し、一家で一般の避難所に身を寄せることをあきらめた事例があったからだ。

 コロナ禍のもとではきめ細かい対応が求められ、必要となるスタッフの人数は増す。大分県京都府は、事前の登録や研修を経て、避難所の運営に携わる人を集めている。国は、学校などが指定される一般の避難所について、特別教室などを要配慮者向けの部屋としたり、車いすが通れる通路幅を確保したりするよう呼びかけている。財政面での支援が欠かせない。

 福祉避難所には別の問題もある。災害時に一般の人が押し寄せ、活動に支障が出かねないとの懸念だ。

 全国で2万2千カ所(19年10月)が確保されている福祉避難所は、コロナ禍もあってさらに増やす必要がある。施設側が二の足を踏みがちな現状を踏まえ、国の有識者分科会は、福祉避難所ごとに受け入れ対象者を特定し事前に公示する制度の創設を提言した。一考に値する。

 避難所関連以外でも、要支援者の名簿作りや、避難方法などを事前に決めておく個別避難計画の策定など、課題は山積している。できることから一歩ずつ、着実に取り組みたい。

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