(社説)日米韓の会合 非核化へ結束締め直せ

社説

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 北東アジアの平和と安定を築く上で、核兵器のない朝鮮半島の実現は、揺るがすことのできない目標である。日本、米国、韓国は、その重みを自覚し、政策を調整せねばならない。

 日米韓の安全保障を担う高官が米国に集い、協議した。バイデン政権下でこの3カ国の枠組みで会合を開くのは初めてで、米政府が新たにつくる北朝鮮政策を話しあった。

 協議の後、3カ国は北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念を共有し、「非核化に向けた一致団結した協調」で解決をめざす、との共同声明を出した。

 日米韓が結束を固めるほど、北朝鮮への圧力は強まる。その認識を確認したのは結構だが、実際には近年、「協調」は掛け声倒れだった。

 予測困難なトランプ外交に加え、日韓の対立も互いの調整を阻んできた。この間も北朝鮮の兵器開発は続いており、事態は悪化している。米政権が同盟重視に戻ったのを機に、結束を締め直さねばならない。

 共同声明に「非核化」が明記されたのは当然である。オバマ政権の元高官ら一部専門家の間では最近、北朝鮮に完全な核放棄を迫るより、核の軍備管理を求める方が現実的だ、との声が出ているが、論外の議論だ。

 バイデン政権は、ロシアと中国を巻き込む包括的な核軍縮をめざすべきであり、その点でも朝鮮半島を含む北東アジアの非核化の目標は欠かせない。

 世界の核不拡散体制を堅持しつつ、アジア太平洋の長期的な秩序も見渡した、責任ある政策を練るべきだ。

 日米韓の連携を強めるためには、韓国にも熟慮を求めたい。今回の3カ国協議の直後に、韓国外相は中国・アモイを訪れ、米国と中国との間の「バランス外交」を演じた。

 中国は北朝鮮を支える後ろ盾だ。先月、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際も、国連安保理は中国・ロシアの抵抗で強い対応がとれなかった。近く、中朝間の貿易も再開するという。

 その中国による今回の韓国外相の招待には、米国を牽制(けんせい)し、米韓日の枠組みを切り崩す思惑もあるとみるべきだ。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)政権にとっては、南北対話を進めたい思いもあろう。だが、無原則な支援で本質的な解決はできない。外交の軸足では3カ国の連携に立つ姿勢を崩してはなるまい。

 日本政府の責任も重い。トランプ氏に振り回された安倍政権のように、米国に追従するだけの姿勢では、おのずと限界がある。日韓関係の改善をはじめ、朝鮮半島との健全な関係と和平づくりを自ら描く政策を考え、米韓と論じてはどうか。

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