(社説)デジタル市場 公正さを全ての基礎に

社説

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 巨大IT企業の取引を透明化するための法制度づくりが進んでいる。政府は「デジタルプラットフォーム取引透明化法」の対象に内外5社を指定し、ネット広告をめぐる規制の具体策も検討中だ。一部の大企業の力が強まり過ぎて消費者の利益を損ねないよう、実効ある取り組みが求められる。

 透明化法では、ネット商店街(オンラインモール)やアプリストアを対象に、出品業者など取引先との契約条件の開示や、苦情処理体制の整備などを報告するよう義務づけた。オンラインモールではアマゾンの日本法人、楽天グループ、ヤフー、アプリストアではアップルグループとグーグルグループが規制対象として指定された。

 優位に立つ巨大企業側が、取引先にとって不利な条件を一方的に強いるようなことがあってはならない。自主的な対応を促す規制で、健全な競争と公正な取引を実現することは、技術進歩の果実を社会が享受するうえでも欠かせない前提だ。

 巨大IT企業には、消費者に無料でサービスを提供しながら、そこで得たデータも利用した広告を扱うことで、巨額の収入を得ているところもある。公正取引委員会が2月にまとめたデジタル広告分野の取引実態についての報告書は、取引の仲介を含めて、グーグルを中心とした寡占化や市場の統合が進んでいることを指摘した。

 公取は、こうした市場構造の中で、独占禁止法や競争政策上問題になりうる行為の例を示している。事業者同士の取引に加え、消費者に対しても、ターゲティング広告などをめぐり個人情報の不当な取得や利用をすることが優越的地位の乱用にあたる場合がありうるという。

 表面的には無料のサービスに見えても、公正であるべき競争がゆがめられ、消費者にとって結果的に高くつく状況が生じることは望ましくない。独占が起きやすいネット市場の特性を踏まえれば、技術の進展を抑制しないように注意しつつ、透明化法の拡充を含め、政府による一定の介入は必要だ。

 公取の報告書は、デジタル広告のあり方がメディア間の競争に与える影響にも着目し、「質の高いニュースコンテンツを作成する媒体社が正当に評価される競争環境」の重要性に言及した。記事などを作成したメディア名の明確な表示や、コンテンツの質も考慮した掲載順位の決定などが望ましいとしている。

 「ニュースの正確さ」が消費者の利益になるという指摘はうなずける。デジタル時代に公正な報道と多様な言論をいかに確保していくかというテーマへの問題提起として受け止めたい。

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