(社説)後半国会 政治の責任 果たせるか

社説

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 新年度予算と関連法が成立し、国会は後半に入った。今年は秋までに必ず、衆院選という国民の審判がある。直面する課題に真摯(しんし)に取り組み、政治の責任を果たせるか。会期末までの残り2カ月余、与野党双方の姿勢が厳しく問われる。

 まずはコロナ対応だ。緊急事態宣言が解除されたばかりだというのに、「第4波」の懸念が現実となりつつある。大阪など3府県に「まん延防止等重点措置」が適用され、首都圏を始め全国で感染は拡大傾向にある。

 医療の逼迫(ひっぱく)を招き、国民の命や暮らしを守れなくなる事態は避けねばならない。打てる手は何でも打つ。党派を超えて、知恵を結集する時ではないか。政権与党は野党の提案にも謙虚に耳を傾け、うなずけるものは柔軟に採り入れる必要がある。

 次に求めるのは、政治や行政に対する信頼の回復だ。

 総務官僚への接待問題は、国家公務員倫理規程の形骸化をあらわにした。業界とのなれあいが、公平公正であるべき行政をゆがめはしなかったか。その疑念はいまだ解消されていない。

 野党が提出した武田良太総務相に対する不信任決議案は、与党の数の力で否決された。しかし、報じられるまでNTT社長との会食を認めなかったり、答弁席に向かう省幹部に「『記憶がない』と言え」と声をかけたり、大臣としての資質を疑わせる一連の振るまいが不問に付されていいわけはない。

 安倍前首相が「桜を見る会」の前夜祭をめぐり、「虚偽」答弁を重ねた問題も見過ごせない。安倍氏は昨年末、衆参の議院運営委員会で通り一遍の弁明をしただけで、その後は何ら説明に応じていない。主張を裏付けるホテルの請求書や明細書の提出も拒んだままだ。

 この問題の解明は、安倍前政権下でないがしろにされた国会の行政監視機能を立て直す出発点である。現下のコロナ対策に国民の理解と協力を得るうえでも、政治や行政への信頼を取り戻すことは欠かせない。

 政権選択選挙を間近に控えていることを考えると、喫緊の課題にとどまらず、めざすべき社会の将来像を含め、与野党が対立軸を示して議論を深めることも大切だ。

 その舞台として活用できるのが党首討論だろう。昨年は1度も開かれなかったが、朝日新聞の社説は今国会の開会にあたり定期開催を提言した。

 貧困や格差の拡大、医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さ、デジタル化の遅れ、政治と科学の関係……。コロナ禍が浮き彫りにした数多くの問題に、どのような処方箋(せん)で臨むのか。菅首相には野党党首との堂々たる論戦を求めたい。

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