災害が起きたとき頼りになるのが地元の消防団だ。ところが団員の数は減り続け、このままでは活動に支障が出かねない。処遇や団の運営を見直し、人員の確保に努める必要がある。
東日本大震災では254人の消防団員が死亡あるいは行方不明になった。避難誘導中や水門閉鎖に向かう途中で津波にのみ込まれるなどし、198人が公務災害と認められた。
総務省消防庁は震災の翌年、有識者の検討会を設け、団員がまず自分と家族の避難を優先することが、多くの命を救う基本であると確認した。各消防団が心すべき原則だ。
想定される災害は地域によって異なる。ふだんから公的消防との役割分担や団に期待される仕事について、自治体や地域で考えを共有しておきたい。
消防団員は通常、定職を持つかたわら非常勤の地方公務員として訓練を積み、災害時に呼び出しを受ける。18年の西日本豪雨では行方不明者の捜索にあたった。翌年、東日本に大きな被害をもたらした台風19号では、団員の呼びかけで避難して命をとりとめた住民も多い。
しかしその人数は、昨年4月時点で約81万8千人と過去最少を更新し、ピーク時の半分以下となった。20~30代が占める割合は1965年の88%から43%に減り、高齢化が進む。
不人気の原因の一つに処遇の問題がある。団員には市区町村が条例で定める年額報酬(平均約3万1千円)や、1回数千円程度の出動手当が支払われる。だがその額や支給方法は地域によって大きな差があり、一部に疑問や不信を呼んでいる。
消防庁で改善を検討しているが、消防団の存在がなぜ必要かをわかりやすく国民に説明したうえで、国として一定の基準額を示してはどうか。
団側の自己改革も求められる。報酬を一括プールして親睦会の費用にあてるなど、お金の使い方が不透明だという指摘は以前からある。厳しい上下関係や付き合いの強制といった古い体質が、若い世代を阻む壁になっていないか。それぞれ足元を点検してほしい。
新たな動きはある。女性団員は毎年増え続け、昨年2万7千人を超えた。横浜市は外国人に門戸を広げ、中国籍や米国籍の人も加入するようになった。構成が多様になることは先の体質の改善にもつながる。
活動は現場出動だけでなく、後方での応急手当てや高齢者宅の訪問など様々だ。防災や被災者支援で役に立ちたいと思う人は多い。体験を伝える機会を増やし、どんなことなら自分にもできるか考えてもらうなど、参加につながる工夫を重ねたい。