(社説)コロナと地価 影響の深度、注視を
今週公表された1月時点の公示地価は、全国平均が小幅ながら6年ぶりに下落に転じた。訪日客の減少や外出自粛などコロナ禍の影響がいつまでどれほど続くのか。構造変化のきっかけになるのか。注視が必要だ。
商業地は7年ぶり、住宅地は5年ぶりに下落した。特に反転が目立つのは都市の繁華街だ。大阪・ミナミでは昨年は前年より4割以上、地価が上がった地点もあったが、今年は下落率が2割を超えるところが続出した。国土交通省によると、訪日客の減少で、ドラッグストアなどで見込めるもうけが減り、それが地価に反映したという。
コロナ禍の影響を考えれば、この1年の地価の動き自体に大きな驚きはない。問題は、これが一過性のものかどうかだ。
昨秋の都道府県地価調査と共通している地点での半年ごとの変動を見ると、最初の緊急事態宣言があった年前半で落ち込んだあと、後半はほぼ横ばいに戻った。減少した取引がある程度回復するとともに、地価にも一定の復元力がみえていた。
一方で、訪日客は激減したままで、五輪の海外客も受け入れないことになった。ワクチン接種の進展と効果の程度にもよるが、昨年までのにぎわいが急に戻るとは思えない。国内旅行や飲食店などへの人出も、2度目の緊急事態宣言や時短要請の長期化もあり、いつ回復するかは不透明だ。場所によってはシャッターを下ろした店も目立つ。
この状況がなお続き、それが新たな変化につながれば、地価へのさらなる影響もありうる。
大阪の動きに表れているように、コロナ禍前の商業地の地価上昇は、そこで商売すれば将来にわたってもうかるという見通しに支えられていた。そうした期待が楽観的過ぎたという見方が一段と広がる可能性もまだある。その場合、これまでの上昇が急速だった地域では反動が大きくなったり、不動産融資に問題が生じたりしないか、引き続き警戒が必要だ。
もう一つは、コロナ禍を経て、働き方や暮らし方に中長期的な変化が生じるかどうかだ。オフィスや商店、住宅に求められる立地条件が変われば、地価とも相互に影響し合う。その場合、全体として下落一色にはならず、地域の特徴ごとに変動の方向や度合いは異なるだろう。
金利や為替相場など世界的な経済環境の変化も含め、コロナ禍とその後の影響はなお読みにくく、地価についても手探りの状況が続かざるをえない。
政府や自治体は短期に加えて長い目でみた地価動向に注意を払うと同時に、「コロナ禍後」の土地利用のあり方について、検討を深めてほしい。
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