(社説)柏崎刈羽原発 東電に運転資格はない

社説

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 少なくとも1カ月以上、テロリストの侵入などにつながりかねない危険な状態が続いていた。信じがたい事態である。

 東京電力柏崎刈羽原発で昨年3月以降、監視カメラやセキュリティーゲートなどの核物質防護設備が計15カ所で相次ぎ故障するなどし、不正な侵入を検知できなくなっていた。東電は代替措置があり問題ないとしていたが、原子力規制庁が休日深夜に抜き打ち検査をすると、措置は不十分だと判明。安全確保への影響が4段階で最悪の水準と評価された。

 社員の不正入室問題に続く柏崎刈羽での不祥事を受け、原子力規制委員会は1年以上かけて追加検査して原因を究明する。昨年9月に東電に対して認めた、原発を運転する「適格性」も審査し直す必要がある。更田豊志委員長も「そういう(原子炉設置変更許可取り消しの)議論が出てくるということは否定しない」と述べている。

 規制庁の聞き取りに対して現場の担当者は、代替措置が不十分だと認識していたと答えたというが、発電所の上司には共有されず、本社にも報告されなかった。東京電力ホールディングスの小早川智明社長は「組織間の連携の悪さの問題などがあった」と話し、原子力担当の役員や本社メンバーらを柏崎刈羽に常駐させて組織横断的に安全文化を作り直すと説明した。しかし組織に深く広がった病根を一掃するのは容易ではない。

 東電は、2002年に発覚したトラブル隠し事件でも、原子力部門の風通しの悪さを要因の一つに挙げた。今年1月に「完了」と発表した柏崎刈羽7号機の安全対策工事でその後、未完了と分かった4件には、設計側と工事側の連携の不十分さが共通すると説明。さらに福島第一でも昨年来、地震計の故障を放置しており、先月の地震を観測できなかった。

 長い期間、抱え続ける問題点を改善できないままの現在の東電に、原発を運転する資格があるとは思えない。

 福島第一の事故後も東電が存続した最大の理由は、被害者や被災地への責任をまっとうすることにある。そのための費用は、柏崎刈羽の再稼働で収益を改善して捻出すると計画する。しかし現状では実現不可能で、別の方策の検討を急ぐべきだ。

 菅首相は「東電は高い緊張感を持って、抜本的な対策を講じる必要がある」と述べたが、人ごとのような答弁をしている場合ではない。東電の株の過半は実質的に政府が持ち、経営を事実上、差配している。福島への責任をどう果たすのか。東電とともに負っている責務の重さを、自覚しなければならない。

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