(社説)米中協議 健全な共存描く対話を

社説

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 およそ「外交辞令」の表現からは、かけ離れた応酬だった。2大国の直接会談は、対決色がいっそう深まる懸念を世界に抱かせる結果になった。

 米バイデン政権発足後に初めて開かれた米国と中国の高官協議である。報道陣の眼前で米国は中国の「強要」や「脅威」を非難し、中国は米国の「非礼」や「偽善」をあげつらった。

 双方とも自国向けに強硬さを演出する思惑もあっただろう。

 米側は、政権交代後の弱腰を見せたくない。中国も7月に共産党の建党100年を迎える。ただ、協議冒頭こそ異例だったが、米側の報道では、非公開協議は比較的冷静だったという。

 バイデン政権はもともと、気候変動イラン核問題などでは中国との協働を探る意向だ。中国側も、国内の経済成長を復調させるうえで、過度の対外緊張は避けたいところだろう。

 地球規模の問題が山積するなか、米中は相互依存を断ち切ることはできないのが現実だ。国際社会にとっても、米中衝突を誰も望まない。

 今世紀の国際情勢を占う両国関係を安定化させるために、できる限り対話を広げ、意思疎通の努力を続けてもらいたい。

 世界史を顧みれば、既存の覇権国と新興国との対立は多くの場合、必然の流れだ。今回の協議も、国力を蓄えた中国の世界観をのぞかせた。

 「米国も西側諸国も、国際世論を代表していない」(楊潔チー〈ヤンチエチー〉氏)との発言は、中国をはじめとする権威主義的な統治の優位性を強調したものだろう。

 その文脈で、新疆ウイグルや香港、台湾などでの強権発動を正当化する主張を、国際社会は看過してはなるまい。人権や法の支配などの規範を堅持する覚悟が、国際社会全体に求められている。

 今回の高官歴訪でバイデン政権が示した同盟重視は、米国の利益だけでなく、健全な秩序を守るためにも理にかなう。トランプ政権のような独善的な対中対決を繰り返してはならない。米国は日韓豪印や欧州など各国と、ていねいに対中政策の調整を進めるべきだ。

 日本も、対中政策を熟考するときだ。先の日米閣僚会合の共同声明後、中国は対日批判のトーンをあげている。

 もとより日本は「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、中国を意識した広域外交の模索を始めている。価値観外交の枠組みの中で米国と連携を深めるとともに、日本自らも中国との主体的な対話を進めるべきだ。

 中国を平和的に包含する秩序をめざし、日本も中国との協力を探り、懸念を伝える是々非々の関係を築かねばならない。

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