(社説)同性婚判決 「違憲」の解消を急げ

社説

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 同性間の結婚を認めず、国が法的保護を一切与えないのは不合理な差別で、法の下の平等を定めた憲法に違反する――。同性パートナーとの法律婚を望む人たちが起こした裁判で、札幌地裁がそんな判断を示した。

 少数者の基本的人権を尊重し、時代の大きな流れにも沿った判決であり、評価できる。

 結婚制度は、ともに生きる2人の関係を公的に証明するもので、そこからさまざまな権利・義務など法律上の効果が生まれる。同性カップルをその枠外に置き続けるのを見過ごすわけにはいかない。国会と政府は不平等の解消に、ただちに乗りださなければならない。

 判決は、性的指向は「自分の意思で選択・変更できないもので、性別や人種と同様だ」と指摘。どんな結婚制度にするか国会には広範な裁量権があるとしつつ、同性愛者を排除するのは合理的な根拠を欠くと結論づけた。ただし、この問題が認識されるようになってまだ日が浅いことを挙げ、国会が民法や戸籍法の改正を怠ったことに対する賠償請求は退けた。

 同様の訴訟は東京など4地裁でも進行中だ。判決も指摘するように、同性婚に関する国民の意識は変化してきている。見直しをためらう理由はない。

 同性カップルの権利に配慮した施策は自治体が先を行く。関係を公的に証明するパートナーシップ制度は、15年の東京都渋谷区を皮切りに、これまでに大阪府、茨城・群馬両県など80近い自治体が導入している。同性パートナーを生命保険金の受取人に指定するのを認めるなど、民間企業の対応も広がる。

 とはいえ法的拘束力はないため、パートナーとして登録されても、配偶者控除医療費控除の合算、相続税の優遇、養子の共同親権などは認められない。犯罪被害者の遺族を支援するための国の給付金も同性パートナーには支給されず、その是非が別途裁判で争われている。

 国外に視線を転じると、既に約30の国・地域が同性婚を認めている。主要7カ国で法整備が手つかずなのは日本だけだ。日本人と同性婚した外国人は来日しても配偶者ビザを得られず、身分が不安定になっているとして、米国などの商工会議所が改善を求めている。

 当事者にとってはそれぞれの人生や幸福に直結する問題である。野党3党は2年前、同性婚を法律上認めるようにする民法改正案を国会に提出したが、たなざらしになったままだ。

 司法の警告を受け止め、この国会で審議を始め、あるべき姿を探る必要がある。これ以上手をこまぬくのは、差別に加担し偏見を助長するのと同じだ。

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