(社説)外資規制違反 異なる説明 深まる不信

社説

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 放送・通信行政に対する不信が深刻の度を増している。事実の解明とそれを踏まえた責任の追及を急がなければならない。

 総務省幹部らに高額な接待をしていた東北新社が、放送法外資規制に違反していたことがわかった。子会社がもつ衛星放送事業者としての認定が、一部取り消される見通しだ。

 驚くのは、東北新社と行政当局双方の順法意識の欠如だ。

 公共性の高い電波を利用するため、放送法は放送事業者について外国株主の議決権を2割未満とする規制を設けている。業界が常に留意する数字である。

 ところが東北新社は、16年にBS4K放送の認定を申請した際、この比率を上回っていたにもかかわらず、欠格事由はないとの届け出をし、総務省もそのまま受け入れていた。

 会社の資本構成は有価証券報告書などの公表資料で容易に確認できる。実際、野党議員が国会でこれを指摘したのが今回の発端だ。総務省はそんな基礎的な点検すら怠っていた。規制官庁として存在する意義はないと言わざるを得ない。

 おかしな話はさらに続く。

 東北新社は17年8月になって外資規制を超えている可能性に気づいたという。参院予算委員会に参考人として出席した中島信也社長は、当時、社員が総務省に報告したと述べ、面談した双方の氏名と日付を明らかにした。だが同省は、担当者にそうした記憶はなく、文書やメモも残っていないとしている。

 森友・加計問題などをめぐって何度も見聞きしたのと同様の光景が、またも繰り返された格好だ。真相は何か。仮に総務省が放送法違反の疑いを認識しながら、とるべき措置をとらなかったとすれば、その理由をはっきりさせる必要がある。

 きのうの予算委では、NTTによる総務官僚らへの接待も論点になった。同じく参考人として審議に臨んだ澤田純社長は、認識の甘さをわびながらも、会合の目的は一般的な意見交換だとの説明に終始した。

 しかし、総務省はNTTの事業に関して様々な許認可権限を持つ。最近は携帯電話料金の値下げやNTTドコモ完全子会社化などの動きもあった。そんななかで高額の接待が行われていたとなれば、行政にゆがみが生じなかったか、疑念を持たれるのは当然ではないか。

 政務三役を含む政治家への接待の実態もやぶの中だ。解明の先頭に立つべき武田良太総務相自身が、NTTとの会食についてあいまいな答弁を続け、当事者能力に疑問符がつく始末だ。

 行政、そして政治への深まる不信にいかに対処するか。政権の最重要課題に浮上している。

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