総務省が谷脇康彦総務審議官を更迭した。週刊文春が先週報じたNTTからの高額接待の事実が省内調査でも確認されたためだ。先月の調査はこの事実を見落としており、発端となった東北新社の問題も含め、引き続き徹底した事実解明が必要だ。

 谷脇氏は菅首相の長男を含む東北新社からの違法接待ですでに減給処分を受けている。NTTは総務省が様々な許認可権限をもつ利害関係者そのものであり、高額の接待が繰り返されれば行政の公平性が疑われる。

 加えて、谷脇氏は東北新社関連の調査やその後の国会で、他に違法接待はないと明言していた。公表された事実経緯と照らし合わせれば、意図的かどうかはともかく虚偽答弁だったのは明らかで、更迭は当然だ。

 今回の調査結果には、谷脇氏らと同様にNTTから接待を受けたと報じられた山田真貴子・前内閣広報官は含まれていない。すでに退職したから調べないという判断ならば、理解できない。体調が回復し次第、調査への協力を求めるべきだ。

 総務省は今後、違法接待の有無についての省内調査の対象を広げるとしている。また、東北新社との関係で行政にゆがみが生じていなかったかについては第三者を加えた検証委員会を検討中だという。

 いずれも実行を急ぐべきだが、谷脇氏接待をめぐる曲折をみれば、少なくとも現状の省内調査の限界は明白だ。態勢を拡充する必要があるし、東北新社以外の調査でも第三者の視点の強化が不可欠ではないか。

 東北新社関連では先週の国会で、外資規制違反をめぐる問題が明らかになった。同社がBS4K放送の認定を受けた直後の17年3月末に、外資の比率が放送法の規制の上限である20%を超えたのに、認定を取り消さなかったばかりか、子会社への認定承継を認めていた。

 総務省は違法状態を認識していなかったと説明しているが、にわかには信じがたい。公表数値も確認していなかったとすれば行政として怠慢であり、それだけでも責任が問われる。

 ここ数年、総務省で行政の不全が目立つ。現職の事務次官が日本郵政副社長に省内の情報を漏洩(ろうえい)して更迭され、ふるさと納税をめぐる自治体との訴訟では最高裁で敗訴した。所管するNHKでは、経営委員会が議事録の公開を不当に拒んでいるにもかかわらず、委員長の再任を後押ししている。加えて、幹部が接待漬けになり、当該企業の違法状態は放置されていた。

 総務省での「政治主導」を実績として誇ってきた菅首相も、この惨状を直視し、自らの責任を省みるべきだろう。