放送関連会社からの接待で減給処分を受けた総務省幹部が、NTTとも会食を繰り返していた。国家公務員倫理法に反する接待を受けていなかったか、総務省が調べるという。利害関係者との過度に密接な関係は、行政の公平性に強い疑念を招く。徹底した調査が必要だ。

 週刊文春が、総務省の谷脇康彦・総務審議官らに対し、NTT社長らによる高額の接待が繰り返されていたと報じた。

 NTTは政府が3分の1以上の株式を保有し、総務相が監督・命令権限を持つ。毎年度の事業計画を始め、事業について様々な許認可権限がある。総務省にとって国内最大の利害関係者といっていい。

 菅首相の長男ら東北新社幹部による違法接待に関する調査では、谷脇氏について、他の利害関係者からの違法な接待は認められないとしていた。谷脇氏自身も1日の衆院予算委員会で、他には「公務員倫理法に違反する接待を受けたということはない」と明言。違法ではない接待について尋ねられると「例えば業界団体などの立食パーティーといった場で通信事業者の経営者のかたがたと懇談をする。あるいは勉強会でご一緒するといったケースはあった」などと述べていた。

 ところが文春の報道後、4日の参院予算委では、報じられた会食への参加を認めた上で、NTT側が示した金額を負担したので倫理法には抵触しないと認識し、大臣官房には報告していなかった、と説明した。

 倫理規程は、公務員側が費用の一部を負担してもそれが十分でなければ、実費との差額分の接待を受けることになるとして禁じている。自分で完全に負担しても、1万円を超える場合は事前の届け出が必要だ。調査や国会で繰り返し「違反はない」と説明した以上、規程との食い違いがあれば、虚偽答弁と言われても仕方がないだろう。

 東北新社の接待をきっかけとした総務省の調査が徹底したものであったのかにも、疑義が生じる。昨日の国会では証人喚問を求める声もあった。当事者の申告だけでは事実が十全に認定できない状況だとすれば、調査態勢についても考え直す必要があるのではないか。

 菅首相はこの10年余り、総務省に強い影響力を持ってきた。大臣時代に課長人事を差配したことを公言し、官房長官や首相になっても携帯電話料値下げなど、通信行政に度々言及してきた。谷脇氏はその総務省内で枢要な部署を歴任し、看板政策を担った人物でもある。自ら任命した内閣広報官、かつて秘書官に任じた長男同様、ひとごとではすまないと、自覚すべきだ。