(社説)みずほトラブル 信頼を取り戻せるのか

社説

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 みずほ銀行で大規模なシステム障害が起きた。02年、11年に続く3度目の大きなトラブルだ。前2回と比べれば、範囲や期間は限られていたが、多くの顧客に迷惑をかけたことは見過ごせない。原因究明と再発防止を徹底すべきだ。

 みずほ銀行によると、2月28日の障害のピーク時にはATM(現金自動出入機)が約4300台停止した。全体の8割にあたる。通帳やカードが取り込まれたままになる被害も5千件を超えたという。

 ATM備え付けの電話で連絡しても担当者が来るまで長時間待たされる客が続出した。コロナ禍で外出自粛が求められるなか、必要なお金が下ろせない上に、通帳やカードが手元に戻らなくなった利用者の不安は相当大きかったはずだ。

 1日に会見した頭取らの説明によれば、27、28日に、定期預金関連で臨時のデータ移行作業を45万件ずつ実行した。加えて、通常の定期預金の更新が27日は15万件、28日は25万件あった。事前に一定のテストをしており、計60万件の27日は問題なかったが、計70万件の28日は処理能力を上回ったという。

 通帳やカードは不正利用防止などの観点から、異常時には機械に取り込まれる仕組みだが、想定以上に大規模に起きたため、その後の対応が追いつかなくなったという。

 さらに検証が必要だが、いまの説明の範囲でも事前の想定の甘さが目につく。システムにはトラブルはつきものだ。臨時の作業であればこそ、テストに余裕を持たせ、人員の配置を含め異常時に機敏に対応できるよう準備しておくべきではなかったか。翌日に頭取が会見して謝罪したとはいえ、情報開示の量やスピードも十分には見えない。

 過去2回の大規模障害では、3行統合後に生じたゆがみが露呈した。その反省もあり、グループの統合を強める組織変更を行い、巨費を投じて新システムも立ち上げた。

 しかし、そうした改革も、日々の経営やシステム運用で緊張感を欠いては実を結ばない。存立意義が問われるまで追い込まれた前回の危機から10年経ち、油断があったのではないか。

 金融庁銀行法に基づき、原因や再発防止策を報告させる方針だ。みずほ銀は命令に真摯(しんし)に応じなければならない。

 金融サービス関連では、決済を中心に新技術を生かした参入が増えている。その中で、免許事業者でもある銀行に期待されるのは何よりも信頼性だ。今回のような事態を繰り返していては、メガバンクの名には到底値しないことを、みずほの経営陣は銘記する必要がある。

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