(社説)日韓「歴史」対立 融和へ果断な行動を

社説

[PR]

 国民感情が絡みあう歴史問題を解くには、当事国政府の不断の努力が欠かせない。火だねを先送りしないための果断な行動と、過去を直視する謙虚な態度がそれぞれ求められる。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が、歴史問題で関係が悪化する日本に、融和的なメッセージを送った。かつての独立運動を記念する式典の演説を通してである。

 文氏は慰安婦などの文言を避けつつ、被害者の名誉と尊厳の回復に最善を尽くすと語った。その上で「韓日両国の協力と未来の発展のための努力も止めない」と言明した。

 日韓の協力が、北東アジアの安定や日米韓の3カ国協力にも役立つ、とも指摘した。

 文氏はこれまで北朝鮮や中国への配慮から、日米韓の結束を強調することに慎重とみられてきた。それだけに今回、微妙に前向きな変化がうかがえる。

 その言葉を行動で示してほしい。文氏は直近の歴史問題への対応策を具体化し、速やかに日本との協議を始めるべきだ。

 文氏は新年の記者会見でも、関係改善に意欲を示した。相次いで出た日本側に賠償を命じた判決に対し、解決案を提示することが期待された。

 それから約1カ月半が過ぎたが、残念ながら、現在まで目に見える進展はない。

 文氏の発言は、国内の対日政策批判をかわし、日韓関係改善を求める米新政権に応える構えを装うためだ、との冷めた見方もある。もしそうならば、根本的な解決は遠のくばかりだ。

 1年後には文氏の後任を決める大統領選が控える。

 日韓の間では、歴史問題が引っかかって、首脳や外相ら高位レベルの会談が滞っている。この異常な隣国関係を次期政権に引き継ぐわけにはいくまい。

 もちろん歴史問題では日本政府にも改めるべき点がある。

 先週ジュネーブで開かれた国連人権理事会では、両国の間でひともめあった。

 韓国政府は日本を名指しせずに「普遍的な人権問題」として慰安婦問題に言及した。これに日本政府は、2015年の日韓政治合意に照らし、受け入れられないと反発した。

 確かに日韓合意では、双方が国連など国際社会で非難や批判をし合わないことを確認した。だが慰安婦問題を取り上げること自体を禁じたわけではない。

 歴史の事実を回避するような態度は、慰安婦問題での日本政府としての考え方を表明した、1993年のいわゆる「河野談話」にも逆行する。

 それは韓国側の冷静な判断を促すのに役立たないばかりか、国際社会からも支持を得られないだろう。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら