(Timely)FとKへの第一歩 敵情視察、控えては 安藤嘉浩

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 第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕)の組み合わせ抽選会が23日にあった。具体的な日程が決まり、気持ちを新たにした選手も多いだろう。対戦相手の戦力や状態も気になっていると思う。

 だけど、今年は敵情視察を控えようと呼びかけたい。

 抽選会を半月以上も前倒ししてリモートで実施したのは、新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか収まらないからだ。3月6日から練習試合が解禁になる。対戦相手の情報を収集しようとチーム関係者らが遠くまで出かけていっては、元も子もなくなる。

 選抜大会の出場校はかつて、シーズン明けの初戦を甲子園で迎えていた。第66回大会(1994年)から開幕前に練習試合ができるようになったのは、実戦を経験し、少しでも試合慣れした状態で本番に臨んでもらいたいからだ。決して、他校の情報を集めるためではない。

 相手の仕上がり具合が気になる一方、自分たちの状態は見られたくないもの。だから試合日程を伏せたり、会場を変更したりする例が、毎年のように見られる。それなら、互いに偵察行為は控えればいい。そもそも、相手が嫌がる行為をするのは、スポーツマンシップに反する。

 きれいごとを言うなと批判されそうだが、指導者やチーム関係者といった大人が、率先して実践してもらいたい。

 もちろん相手の戦力を分析し、戦略を練ることは大切だ。手元にある情報を活用し、大いにやればいい。

 この1年を思い返してみよう。練習も試合も思うようにできず、春夏の甲子園大会も中止になった。その中で実感したのは、健康の大切さ、そして野球を楽しみ、試合ができることのありがたさだ。感染状態が落ち着き、自分も相手も健康でなければ、試合はできない。忘れかけていた大切なことを、苦しい経験が思い出させてくれた。

 日本高校野球連盟の旗にある「F」マークには、「フェアプレー(公明正大)」「ファイト(勇気)」「フレンドシップ(友情)」の精神が込められている。八田英二会長が抽選会のあいさつでも紹介し、「新たに三つのK(感謝、感動、希望)をおくる。未来に向かって力強く歩んで下さい」と締めくくった。

 再スタートの第一歩は、未来への第一歩。正々堂々と踏み出して欲しい。(編集委員)

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