(社説)G7の協調 コロナ対応が試金石だ

社説

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 民主主義の理念を共有する主要国が、ことしを新たな協調の出発点にすると誓った。そこに行動が伴うかどうかに「G7」の復権がかかっている。

 米バイデン政権の発足以降で最初となる主要7カ国(G7)首脳会議が、オンラインで開かれた。共同声明で「2021年を多国間主義の転換点」にすると宣言した。

 トランプ政権下では、貿易や気候変動問題などで米欧が対立し、自由主義圏の足並みが乱れた。その間に、中国をはじめとする権威主義や強権政治が世界で勢いづいた。

 今回その流れを止める意思を共有した意義は大きい。

 声明は「人びとと地球の健康と繁栄」を促進するため、コロナ禍への対応、経済の回復、気候変動問題などでの協調をうたった。

 とりわけ喫緊の行動を迫られる問題は、新型コロナワクチンをどう公正に供給するか、である。G7が人権尊重という普遍的価値観に基づいて途上国を支えなければ、中国やロシアと違う存在意義は示せない。

 国連主導で設けられたワクチン分配の枠組みに、G7から計75億ドル(約7900億円)の拠出を表明した。日本は、2億ドル(約210億円)を出すという。途上国の人口を考えれば、さらなる支援が必要だ。

 一方、ワクチンの争奪戦は激しさを増している。

 欧州連合の行政を担う欧州委員会は、ワクチンの域外への輸出に対し一時的な許可制度を導入した。これに国際機関などが懸念の声をあげている。

 国連事務総長によると、世界で供給されているワクチンの75%がわずか10カ国で接種されており、130カ国以上が接種できない状況にあるという。

 欧州委は、国際分配は許可制から外しているというが、それでも、資金と技術を持つ国や地域がワクチンを囲い込むような内向き姿勢をとるなら、「自国第一」のそしりは免れまい。

 今回のG7声明は、国連が掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)に言及し、どの地域も人間も置き去りにしないよう、世界経済を立て直すと強調した。そのためには、ワクチンの生産能力を上げる取り組みも主導してもらいたい。

 菅政権は「自由で開かれたアジア太平洋」構想を掲げつつ、価値観外交の推進を看板としている。ならばなおさら、今回の声明が打ち出した、グローバルな保健衛生体制の拡充に向けてイニシアチブを発揮すべきではないか。

 日本もG7の一員として、多国間主義を再生する重責を負っている。

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