(社説)総務官僚接待 疑念の解消には程遠い

社説

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 国家公務員倫理規程にもとる接待がこれほど横行していたとは。過去に繰り返し批判されてきた、官僚と業界のなれ合いそのものだ。行政がゆがめられることは本当になかったのか。通り一遍の調査で、その疑いを拭い去ることはできない。

 総務省がきのう、菅首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」との会食に関する調査結果を公表した。

 週刊文春が報じたのは、谷脇康彦、吉田真人両総務審議官と秋本芳徳・情報流通行政局長ら4人による4回だったが、他にも衛星放送の担当課長や元課長を含む8人が19回の接待を受けていた。谷脇氏ら4人についても、他に15回が確認された。

 東北新社の子会社は、総務省が許認可権限をもつ衛星放送事業を行っている。「親会社を利害関係者とは思わなかった」という谷脇氏らの説明は、およそ常識に反する。総務省は12人中11人の倫理規程違反を認め、近く処分する方針だが、多くの疑問点が残されたままだ。これで幕引きは許されない。

 他の事業者からの接待はなかったのか。秋本氏が認めたように、東北新社とは頻繁だったというなら、なぜ「特別扱い」なのか。総務省は強く否定するが、首相の長男が籍を置く会社であることが影響したとみるのが自然だろう。

 そもそも総務省は、会食で放送行政に関するやりとりはなかったと説明していたが、週刊文春による音声データの公表で覆された。都合の悪い事実には、最初から目をつぶろうとしているのではないか。

 最終的に、すべての会食で、放送業界や東北新社のグループ会社の話題は出たかもしれないが、「行政をゆがめるような不適切な働きかけはなかった」という。どこまで深く調べたのか、職員の言い分をうのみにしただけではないのか。

 首相はきのうの衆院予算委員会で、「長男が関係して、結果として公務員が倫理法に違反する行為をすることになった」と陳謝したが、事実関係の解明については、総務省などに委ねる考えを変えなかった。

 谷脇氏は、菅政権の看板政策である携帯料金やNHK受信料の値下げを担当している。また、首相が内閣広報官に起用した山田真貴子氏が、総務官僚時代に東北新社から高額の接待を受けていたことも別途、明らかになった。

 これは一総務省の問題ではない。政権全体の信頼にかかわると、首相は重く受け止める必要がある。野党が求める長男ら東北新社側の国会招致に応じるなど、徹底した実態解明に向け、指導力を発揮すべきだ。

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