(社説)コロナ修正合意 疑問や課題がなお残る

社説

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 政府案の根底にあった罰則頼みの強権的な発想と、現場感覚との乖離(かいり)はそのままだ。

 新型コロナ対策関連法案について、与党と立憲民主党の修正協議がきのう決着した。個々の論点では評価できる面もあるが、依然として肝心なところで多くの疑問や課題が残る。

 感染症法の改正を巡っては、入院措置に応じなかった場合、懲役を含む刑事罰を科すとした政府案を見直し、行政罰の過料とする。保健所による接触者調査を拒んだ者への罰金も、同じく過料にとどめるという。

 しかし行政罰であっても、違反者に罰を与えることに変わりはない。政府案が明らかになった際にいち早く疑義を表明した医学界に続き、保健師の団体も罰則の導入に反対する声明を出している。コロナ対策の最前線で調査や入院調整などに取り組む人たちの貴重な声だ。

 罰則で強制すれば、かえって検査から逃げたり症状を隠したりする行動を招く恐れがある。強化すべきは感染者への支援であって、罰ありきの考えでは住民との信頼関係をもとにした保健所の対策を無にしかねない。声明はそう指摘する。

 入院したくてもできない感染者が大勢いて、保健所の調査も十分手が回らないのが現実だ。

 法改正を必要とする「立法事実」もあいまいなまま改正案を閣議決定し、世論の反発が強いと見るや審議入り前から野党との修正協議に乗りだす。そんな政府・与党の振る舞いを見ていると、医療逼迫(ひっぱく)を招いた政治の責任から国民の目をそらし、コロナ対策に取り組んでいる姿勢をアピールするための閣議決定だったのではないのかとの疑念がわいてくる。

 特別措置法についても問題は解消していない。

 緊急事態宣言に先立ち「まん延防止等重点措置」を発出できる条文を設け、飲食店などに時短や休業を求められるようにするという。応じない者には過料の規定があるが、応じた者への財政支援は修正協議を経てもあいまいなままだ。国会答弁などで担保するとの説明だが、いかにも均衡を欠く。

 西村担当相はどんな事情があれば過料を免れるかと問われ、「かなり限定的に考えなければならない」と答えた。経営や雇用を守ろうとやむなく営業する者への配慮は感じられない。多くの理解と協力を得るべく、売り上げの減少に応じたきめ細かな支援に本腰で取り組むのが、閣僚として当然の務めだ。

 改正案の審議がきょうから始まる。政府が疑問に丁寧に答えるのはもちろん、立憲もまた、重い説明責任を負うことを自覚しなければならない。

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