(受験する君へ)想定と違っても世界は開ける 近畿大3年・林幸穂さん

受験する君へ

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 「夢の周辺にいることが大事」。近畿大3年の林幸穂さん(21)が大切にしている思いだ。迷った時、この言葉に立ち返る。

 三重県伊勢市の出身。10歳のある日、母が仕事と家事に疲れて泣いていた。「温かいココアを作るか。いや、化粧品が笑顔にするのかな」。大人になったら美容に関わる仕事をしたい、と思った。

 中学時代、英語と化学が好きだった。文部科学省からスーパーサイエンスハイスクールに指定されている県立伊勢高校に進んだ。2年の時、地元の化粧品会社との共同研究に参加。中高生向け基礎化粧品の開発を目指し、生徒の意見を聞く校内アンケートに奔走した。「テストで学年1位になれなくても、私なりの強みを見つけた気がした」。大学でも商品開発に携わりたいと考え、産学連携に力を入れる近畿大に狙いを定めた。

 同級生の多くは国公立が第1志望で、先生にも薦められた。でも「ここ以外は考えられない」と、公募型の推薦入試で近畿大に出願。手に入る限りの過去問題を集め、徹底的に傾向を分析した「攻略本」を作った。何でも根詰める性格なので、カフェで店員と世間話をしたり家で犬と遊んだり、心穏やかに過ごせる時間を意識的に作った。

 そして、農学部に合格。入学の2カ月後、奈良県庁に赴き、県産の植物を使った化粧品の共同開発を提案。教授にも持ちかけた。大学の研究は成果が出るまで長く地道な作業が必要だと知らずに空回り。「私がやりたいのは、研究と市場をつなぐことなのかも」。2年から経営学部に転向した。

 「思っていた道と違う方向に進んでも、そこで開ける新しい世界がある」。ゼミで今、美容商品を紹介する女性誌の言葉を分析する研究をしている。卒業後は美容雑誌や生活用品メーカーなどでデータアナリストになることが目標だ。「いつ失敗するかわからないし、不安にならない方が無理。だから自分を責めないで。行き着いた先で何か見つかるから」。受験生だった頃の自分に言いたい。(花房吾早子)

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