(社説)困窮学生支援 退学防ぐ対策を早急に

社説

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 コロナ禍による経済的理由で退学・休学する学生が今年度末に増える――。全国の少なくとも190の大学がそう予想していることが、朝日新聞と河合塾の共同調査でわかった。家計の悪化で学費を払えない学生が相次ぐとみられている。

 しかし雇用環境は厳しく、大学をやめた後どう生活していくか大きな不安がある。資格もなく、希望する仕事にも就けない若者が増えれば、社会は不安定さを増し、将来に禍根を残す。政府は困窮学生への追加支援策の検討を急ぐべきだ。

 各大学もこれまで、授業料の減免や延納の承認、臨時奨学金の支給などの手を打ってきた。だが、寄付金や施設整備の先送りで捻出した財源には限りがある。オンライン授業のための通信設備の増強や感染防止対策の費用もかさみ、財務状況の悪化を懸念する大学は多い。

 政府は春以降、生活を支えるアルバイト収入が減った学生に10万~20万円の緊急給付金を支給。低所得者向けに授業料を減免する修学支援制度を、コロナ禍による家計窮迫で支援対象になると見込まれた段階で、早期に適用する措置もとった。

 大学や国による対策の効果か、文部科学省の調べでは、4~8月に中退した学生は約1万1千人(全体の0・4%)で昨年同期より減った。だが感染は収まらず影響はより深刻になっている。この数字に安心していられる状況ではない。

 懸念されるのは経済事情だけではない。最近の感染拡大を受け、都市部などではキャンパスへの入構や課外活動の制限を再び強化している大学もある。共同調査では「学生との面談がかなわず十分なケアができない」「友人に会えずストレスがたまっている学生が多い」などと、精神面の苦境を気づかう回答が多く寄せられた。

 各大学はこれまで以上に学生の状態の把握に努め、政府はそれを聞き取って、今後の政策に生かさなければならない。大切なのは、困窮する学生の立場にたって、支援を受けやすい制度や手続きにすることだ。

 たとえば、修学支援制度の対象をコロナの影響を受けた中間所得層にも一時的に広げる。利用者が多い日本学生支援機構の貸与型奨学金について、返還免除の条件を緩和する。各種申請に必要な書類を簡素化する――などだ。2度目の緊急給付金も検討対象に入ってこよう。

 休退学の申し出が集中する3月まで時間がない。一人でも多くの若者が学びを継続できるようにするために、いま何をすべきか。財政事情は厳しさを増すが、未来への投資を怠った社会に明るい未来は期待できない。

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