(社説)国会最終盤 安倍氏の説明欠かせぬ

社説

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 今国会は残り5日となり、政府・与党は会期を延長しない方針だ。しかし、一連の疑惑をうやむやにしたまま終わっては、立法府の存在意義が揺らぐことになろう。

 まずは、「桜を見る会」の前夜祭をめぐる問題である。

 安倍前首相周辺が費用の一部の負担を認め、東京地検特捜部の調べに対し、「政治資金収支報告書に記載すべきだった」と、違法性の認識を認めたという。補填(ほてん)はなく、報告書に載せる必要もなかったと、安倍氏が1年にわたって繰り返してきた説明は偽りだったことになる。

 国会審議の土台を崩す、看過できない重大事だ。安倍氏は知らなかったと伝えられるが、国会では連日厳しい追及が続いていた。事実関係をどこまで真剣に確かめたのか。直近の5年間で900万円を超える補填の原資はどこから捻出(ねんしゅつ)したのか。安倍氏に直接たださねばならない疑問点は尽きない。

 ところが当の安倍氏は、いまだに記者会見も開かず、野党による国会招致の要求も、捜査中であるとして、与党がはねつけている。

 国会の政治倫理綱領は、議員が疑惑をもたれた場合、自ら真摯(しんし)な態度で解明に努めなければならないと定めている。刑事責任の有無を判断する捜査とは別に、首相の任にあった者の重い政治責任を踏まえれば、すすんで国会に出て、説明を尽くすのが当然ではないか。

 さらに、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否の問題である。

 法の趣旨に背き、学術会議の独立性・中立性を脅かす判断に対し、菅首相は「人事の秘密」などを盾に、明確な理由を語っていない。一方で、政府・与党は学術会議のあり方への「論点ずらし」に余念がない。

 学術会議人事への介入は、安倍前政権時代に始まり、警察官僚出身の杉田和博官房副長官が一貫してかかわったとされる。今回の6人除外も、学術会議に対する菅氏の「懸念」を踏まえ、杉田氏が案をあげてきたという。やはり、杉田氏本人から国会で直接事情を聴くことなしに、実態は明らかになるまい。

 森友問題の解明も進んでいない。自ら命を絶った近畿財務局職員が公文書改ざんの経緯を詳細に記したとされるファイルの提出を、衆院調査局が要求したところ、財務省は訴訟中を理由に文書の存否さえ答えなかったことが報告された。

 政権の国会軽視をこれ以上許さず、政治への信頼低下に歯止めをかけることができるか。立法府全体が問われていることを、与野党の別なく、深刻に受け止めるべきだ。

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