(社説)老朽原発 「40年」原則を思い出せ

社説

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 東京電力福島第一原発の事故を受け、原発の運転は40年までとするルールができた。事故の恐れが相対的に強い老朽原発の廃炉を着実に進め、原発に頼らない社会にしていくためだ。

 ところが、電力不足などに備えた「1回だけ、最長20年延長できる」との例外規定の適用で、40年を超す運転が現実になりつつある。看過できない。原則を思い出すべきだ。

 1970年代に稼働した関西電力高浜1、2号機(福井県高浜町)の再稼働に、高浜町議会が同意した。原発の安全性を審査する国の原子力規制委員会が運転延長を認めてから4年。まだ高浜町長や福井県の議会と知事の同意手続きが残るが、国内初となる40年超運転が具体化に向けて動き出した。

 原発が地域経済を支えてきた事情があるとはいえ、住民の安全を守るために議論を尽くしたか。10月末の高浜町での説明会では、事故時に避難路となる県道について、自然災害が重なった場合への懸念が出た。課題は解消されていない。

 より問われるのは政府だ。

 菅政権は「省エネ、再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する」と強調する。しかし原発については規制委と地元自治体の判断に委ね、手続きが終わると再稼働に向かった安倍政権時代から、姿勢に変化は見えない。それどころか、経済産業省資源エネルギー庁の幹部が高浜原発の関係自治体を訪れ、再稼働への同意を働きかけてきた。

 福井県内では、高浜原発とともに若狭湾沿いに立地する関電美浜原発3号機(美浜町)でも規制委が40年超運転を認めており、町議会は12月に再稼働について判断する予定だ。

 大飯原発(おおい町)を含めて福井県で計11基を動かしてきた関電は美浜、大飯両原発の計4基の廃炉を決めたが、40年超運転がすべて実現すれば7基が残る。福島の事故が浮き彫りにした集中立地の危うさは消えないままだ。

 老朽原発を閉じる姿勢をはっきりと示し、民間事業者の再エネへの投資を後押しする。原発に依存してきた自治体とともに地域社会の将来を考え、政策で支援していく。それが政府の務めではないか。

 関電も考えを改める時だ。

 元高浜町助役からの金品受領など一連の不祥事では、信頼回復への改革がなお途上にある。福井県内の原発に置いている使用済み核燃料中間貯蔵施設の県外候補地を示すという県との約束も、見通しは不透明だ。

 経済的にも疑問が多い古い原発に見切りをつけ、経営を転換する。それが責任ある対応だ。

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