(社説)再エネの拡大 政策の強化を急がねば

社説

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 再生可能エネルギーの目標をもっと高く――。経済団体や自治体などから、再エネ政策の強化を求める声が相次いでいる。政府は真剣に耳を傾け、太陽光や風力による発電を伸ばす政策づくりを急がねばならない。

 経済同友会は先月、「総発電量に占める再エネの割合を2030年に40%とするべきだ」との提言をまとめた。原発の再稼働が進まない現状では、二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるには再エネの大幅な拡大が必要だと判断したという。

 34道府県でつくる自然エネルギー協議会も先月、再エネの比率を30年に40%超とするよう政府に求めた。ほぼ同じ時期、全国19の政令指定都市でつくる自然エネ協議会も、30年までに再エネを少なくとも45%とするよう提言した。

 一方、太陽光や風力などの利用拡大を進める企業などでつくるネットワーク「RE―Users」は今月、30年までに再エネを44%以上にする、という提言に40を超える企業や団体から賛同を得たことを発表した。

 再エネ拡大を求める声が広がっているのは、現在の政府の目標が貧弱すぎるからだ。「30年度に再エネの比率22~24%」をめざしているが、18年度ですでに17%なので、今後の上積みは5~7%幅にとどまる。10年ほど先の目標としてはいかにも低く、ほかの先進国と比べて腰が引けている。

 その背景には、政府や電力業界が重視する「エネルギーのベストミックス」という考え方がある。資源の乏しい日本は特定の電源に偏らず、火力と原子力と再エネをバランスよく利用するという立場である。

 だが、エネルギー政策を取り巻く環境は激変している。

 一つは、地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定の下、大幅なCO2削減のため脱化石燃料が求められる点だ。特に、排出量の多い石炭火力からの脱却が国際的な流れになっている。このため政府は、効率の悪い旧式の石炭火力を大幅削減する方針を示さざるをえなくなった。

 さらに原発には、福島の事故で比率が数%に落ち込んでいる現実がある。再稼働の停滞や古い原発の廃炉を考えると、「30年度に20~22%」という政府目標の達成は難しい。従来通りのベストミックスの維持は困難だと考える必要がある。

 温暖化対策のためにも、エネルギー安定供給のためにも、状況変化への対応が求められる。既存電源を優遇する電力システムの改革、炭素税排出量取引のようなカーボンプライシングの導入など、あらゆる手段で再エネ中心の新たなエネルギーミックスをめざすべきだ。

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