2013年に放送され、視聴率40%超を記録したTBSドラマ「半沢直樹」の続編がふたたび好調だ。前作からどう変化したのか。なぜこの物語は人をひきつけるのか。

 ■痛快さ・女性観、まるで時代劇 松井今朝子さん(作家)

 荒唐無稽なまでの勧善懲悪の物語は、庶民の叶(かな)わぬ夢を発散させてくれますが、こうした物語はリアリティーがありすぎると痛快にならない。「半沢」は特に今作から歌舞伎役者がこれまでテレビで控えてきた「クサい」演技を全開にしたことで、これは時代劇だと視聴者が距離を置いて楽しめるようになった。江戸時代に作られた忠臣蔵も設定を南北朝時代にして現実の事件をめぐる批判を発露できた。時代をずらしてフィルターをかける日本らしい文化です。

 ただ、時代劇とはいえ、女性観の古さは気になります。主要な役のほとんどが男性。半沢の妻は男の目から見て実に都合のいい女性のように見えます。

 実はこういう女性像のルーツをさかのぼると歌舞伎にたどりつきます。男性ファンの多かった人形浄瑠璃で男性にとって都合の良い女性像が生まれ、歌舞伎を通じて女性の憧れにもなった。男性目線で女性の理想像が作られている点で「半沢」は歌舞伎らしいかも。

 同じ時代劇でも中国や韓国では近年、全面的に男に頼らず自立した女が生き残るというフェミニズムの潮流を取り込んだ作品が多々見られます。片や日本の視聴者が昔ながらの時代劇的な女性像に恋着しているとすると世界から取り残されてしまう。心配ですね。(聞き手・守真弓)

 ■権力抗争に終始、少し牧歌的 真壁昭夫さん(法政大大学院教授)

 約30年銀行の世界にいて、証券部門にもいました。東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券に出向し、難なくこなした半沢は優秀です。証券と銀行はビジネスの性格が全く異なり、互いの業務を理解することは難しいからです。

 銀行員はいわば農耕民族。コツコツ努力することで作物は実ります。一方、証券会社の仕事は狩猟。ビジネスチャンスがある時に集中します。リスクをとって動くことも。銀行員が証券ビジネスをすることは、農家がいきなり鉄砲を持って狩猟するようなもの。半沢は苦しみの方が大きかったのではないかな。

 かつて信州大で大学生に教えていました。「銀行の内幕を適切に表していますか」と聞かれたり、就職相談を受ける機会があったりした時は「ケース・バイ・ケースです」と答えていました。その印象は、今シーズンも変わりません。

 銀行を取り巻く状況は変化しています。コロナ禍の経済危機で、世界的に景気を支えるため、中央銀行がたくさんのお金を刷っていることで金利が下がり、銀行の収益性は悪化しています。半沢直樹の世界は内部の権力抗争に終始しており、今という視点で見ると少し牧歌的です。現在の銀行はどう生き残るのか、もっと必死に考えているのです。(聞き手・宮田裕介)

 ■嫌な思い出、僕も「倍返しだ」 松村邦洋さん(タレント)

 前作から登場人物のモノマネをネタにしています。今作は、顔芸が多くなり、がっついている印象。セリフも耳に残りやすく、モノマネするのが気持ちいい。

 半沢はやりかえしているようで、意外と敵を作っていないようにも見える。「倍返し」というけれど、そこに正義があっても、2倍返しが4になり、8になり、16、32、64……となれば、最終的に「戦争」になってしまう。けど半沢には情と義があり、途中で交渉に切り替えたりするのがいいところ。

 僕は歴史や大河ドラマが好き。半沢を歴史上の人物で例えると、ですか? こんな人はいない。ただ、少ない兵で強大な敵に向かっていく「戦(いくさ)巧者」という意味では、半沢役の堺雅人さんが大河で演じた真田信繁に通じるかも。野球でいえば、弱いところを強くして去っていく野村克也さんのようでもある。

 毎回見終えると、しばらく興奮する。そして、学生時代にタイムスリップした気分になり、先輩や同級生、先生たちからバカにされたり、怒られたりしたことを思い出します。半沢になって、「おまえたち、何を考えているんだ」といちいち言い返す妄想をする。今も会社で理不尽な思いをしている人は多いと思う。だからこそ、半沢を見て「よく言ってくれた」と気持ちがこもるのでは。(聞き手・黒田健朗)

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