(社説)コロナ全国拡大 危機回避へ具体策を

社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。

 東京から地方へ。若者から中高年へ。接待を伴う飲食から一般の会食や職場、家庭へ――。感染経路が不明の例も増え、事態は新たな局面に入ったと見るのが自然ではないか。

 この間政府は、検査を幅広く行った結果が数字を押し上げているが、医療体制は逼迫(ひっぱく)していないと説明してきた。だが人工呼吸器を必要とする重症者は7月半ばから増加に転じた。病床の準備には時間がかかるうえ、病院経営のさらなる圧迫につながることなどから、専門家や医療現場からは政府の認識の甘さを指摘する声が相次ぐ。

 多くの自治体は対応に追われる。沖縄県は独自の緊急事態宣言を出し、県民に不要不急の外出や県をまたぐ往来の自粛を求めた。東京都は酒類を提供する飲食店などに営業時間の短縮を、大阪府も地域・業種を絞って休業や時短を要請する。

 地域における流行や医療の状況を踏まえ、試行錯誤を重ねながら最適解を見いだすことが大切だ。今年春から初夏にかけての第1波の時と同じく、あるいはそれ以上に、知事を始めとする自治体の力量が問われる。いわゆる3密の回避など、感染リスクを避ける行動を一人ひとりが心がけ、実践していく大切さは言うまでもない。

 一方、政府の動きはいかにももどかしく、頼りない。

 安倍首相は「徹底検査、陽性者の早期発見、早期治療を進める」「自治体と連携を取り、必要な対応を講じる」という。人々が聞きたいのはそんな分かりきった話ではなく、そのための具体策であり、行政の最高責任者である首相の覚悟だ。

 緊急事態宣言の解除後、検査や保健所の態勢強化にどこまで本気で取り組んだのか。今後どんな戦略を描いているのか。強行した「Go To事業」をどうするのか。自治体からは休業要請などとセットで出す協力金について、国の補助を求める声があがる。どう応じるのか。

 こうした疑問にしっかり向き合わず、説明から逃げる姿勢が、社会の不安と不信を深めていることに気づくべきだ。

 政府のコロナ対策分科会は4連休前、爆発的な感染拡大に備えた措置を検討するよう求めた。だが判断する指標をめぐる議論は、今月に持ち越された。このスピード感の欠如も早急に正さねばならない。

 「Go To」が示すように政府は社会経済活動の再開と維持に軸足を置く。だが、いま感染者の増加に歯止めをかけることに失敗すれば、経済はさらに傷み、再生はかえって遠のく。無策・愚策の時ではない。

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