(社説)COP26延期 排出削減強化の好機に

社説

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 今年の秋に予定されながら、新型コロナウイルスの影響で延期されることになった第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の開催が、来年秋と決まった。

 気候危機は深刻化し、地球温暖化対策は待ったなしだ。会議までの時間を有効に使い、温室効果ガス削減の国際的な動きを加速させねばならない。

 折しも、コロナ危機で世界の排出量が一時的に減っており、環境に配慮した経済の回復(グリーン・リカバリー)を進めることが急務となっている。

 各国がグリーン・リカバリーの情報をオンラインで共有して温暖化対策の強化につなげる、というアイデアを小泉環境相が提唱したのは時宜にかなう。9月にはオンラインで閣僚級の会議も開くという。多くの国に参加を呼びかけ、削減目標の上積みにつなげてほしい。

 それにはまず、排出量が世界5位の日本みずからが積極的な姿勢を見せる必要がある。

 温暖化対策の国際ルール・パリ協定は、産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることをめざす。ただ、各国が削減目標をすべて達成できても、今世紀末の気温上昇は3度を超してしまう。

 国連はCOP26までに削減目標の上積みを各国に求めてきたが、対策強化は思うように進んでいない。

 日本政府は今春、5年前の数値に据え置いたままの削減目標を国連に再提出した。主要排出国の中で先陣を切ったが、肝心の目標は、パリ協定の「2度未満」の実現に遠く及ばない。これでは、ほかの国々に誤ったメッセージを送ってしまう。

 安倍政権には、削減目標の上積みを改めて求めたい。

 政府は間もなく温暖化対策計画を見直す議論を始めるほか、来年はエネルギー基本計画も改定する。延期されたCOP26に向け、気候危機対策の強化へと政策のカジを切る、まさに好機ではないか。

 石炭火力から撤退する方針を決め、国内外の新規の計画を凍結する。将来の脱原発に向けて原子力の比率を抑え、再生可能エネルギーを思い切って拡大する――。政治の主導で、政策を大胆に転換するべきだ。

 金融やビジネスの脱炭素化は加速しており、コロナ後の世界のありようは大きく変わる可能性がある。COP26まで漫然とすごしてはならない。

 パリ協定からは米国が離脱するほか、中国やロシア、インドなどの動きも鈍いなど、大排出国の消極的な姿勢が目立つ。

 欧州連合(EU)と連携し、これらの国々に行動を促す。それが日本の役割だ。

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