総額31・9兆円の今年度2次補正予算は、10兆円の予備費を計上したまま成立した。前例の無い規模の予算の白紙委任となりかねず、財政民主主義の理念に反する国会の自殺行為と言うほかない。

 憲法は予算に国会の議決を義務づけており、内閣の責任で支出できる予備費は、「予見し難い予算の不足」にあてるために限った例外措置と位置づけている。その趣旨からすれば、抑制的に運用しなければならないのは当然のことだ。

 いくらまで計上してよいか法令で明文化されておらず、巨額の予備費の是非は過去にも問われてきた。

 例えば、リーマン・ショック後の2009年度当初予算に計上された1兆円の経済緊急対応予備費では、当時の与謝野馨財務相が「予算総額88兆円に対する比率の問題としては、(過去と比べて)断トツではない」と弁明した経緯がある。

 今回はその10倍にのぼる空前の金額だ。政府はこのうち、5兆円分は中小企業支援や雇用調整助成金などに充てるといった大まかな使途を示したが、具体的な中身は不明なままだ。残りの5兆円分は「コロナ対策」としか決まっていない。

 にもかかわらず、共産党を除く主要な野党は、2次補正に賛成した。中小企業への家賃補助など一刻を争う事業を含むとはいえ、憲法によって課された予算をチェックする責務を、与党とともに放棄したも同然だ。

 安倍首相は「100年に1度の国難を乗り越える上においては、前例にないこともやらなければいけない」と説明する。

 ならば有事に迅速に対応できるよう、17日までの国会の会期を延長するのが筋である。

 予備費の執行については国会の事後承諾を得るよう憲法は定めているが、今回は10兆円という例外的な金額だ。事前に使途を説明し、了解を得なければならない。さらに追加の支出が必要になった場合も、国会を開いていれば、速やかに3次補正予算案を提出できる。

 予算の適正な執行に議会の監視が欠かせぬことは、このところの国会審議でも明らかだ。

 持続化給付金の事務委託の契約をめぐる不透明さは深まるばかりだ。「Go To キャンペーン事業」で最大3千億円にのぼる高額な委託費が問題視され、公募が中止されたが、政府は契約をどう見直すかを示していない。

 1次と2次で計57兆円超にのぼる未曽有の規模の補正予算の執行は、いつにもまして透明性が求められる。安倍政権は国会の閉会を急がずに、国民の疑念に答え続ける必要がある。