(社説)経済危機対応 感染抑止との両輪で

社説

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 新型コロナウイルスの感染者の増加に歯止めがかかり、緊急事態宣言は39県で解除された。だが経済活動への重しは依然、のしかかったままだ。コロナ禍からの真の出口に向かうには、感染拡大防止と経済回復の両立が求められる。

 昨日速報が発表された1~3月期のGDP(国内総生産)は、実質成長率が前期比年率で3・4%のマイナスだった。新型コロナの影響が本格化する前の時期だったが、内外需とも大きく落ち込んだ。その前の昨年10~12月期は消費増税で低下しており、本来は反動増が見込まれていた。企業の19年度決算も利益の減少が目立ち、赤字決算も少なくない。

 緊急事態宣言で外出自粛が本格化した4月以降はさらに深刻だ。民間エコノミストの間では4~6月期のGDPは年率で20%前後落ち込むとの見通しが出ている。

 この状態がいつまで続くのか。エコノミストや企業には、4~6月期が底との見方が多い。トヨタ自動車は来年1~3月期は販売が前年並みに戻るとの見通しを置いている。

 業務の工夫やデジタル化の進展で、感染リスクを抑えながら経済活動を拡大する余地は確かにある。いまの社会状況のなかでの新しい需要を取り込むことも大切だ。だが、ワクチンの開発と大規模な接種といった局面転換がなければ、V字回復は望みにくい。

 ワクチンの実用化には早くて1~2年かかるとの見方が多い。それまでに第2波、第3波の流行があり、緊急事態宣言が繰り返される可能性も指摘されている。7月以降に経済回復とのシナリオが行き詰まるおそれも軽視はできない。

 事態が長期化すれば、GDPへの負の影響は数十兆円に及ぶ。経済が損なわれ、人々の生活は困窮し、医療に振り向ける余力も制約されかねない。

 いま目指すべきは「感染拡大の防止」と「経済の再拡大」の好循環をつくりだすことだ。少なくとも医療や福祉、物流など暮らしに不可欠な分野を支える人々が安心して働ける環境を整えねばならない。

 そのためには、検査や、感染者のケア、感染の実態や経路の把握に、人・モノ・カネを大規模に投じるべきだ。多くの命を救うことに加え、巨額の経済損失を回避するためにも、小出しではない対応が必要だ。

 政府の基本的対処方針に関する諮問委員会には、医療のほか経済の専門家も加わっている。人権やプライバシーの保護の視点も交え、総合的な戦略を立てて実行するために、政府全体での態勢強化を図るべきときだ。

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