(社説)コロナ対策 防災の知恵を生かそう

社説

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 平時からの備えとそれを踏まえた即応力が問われる点で、感染症対策は災害対策と通じるところが多い。近年、自治体で導入の動きが広がる「タイムライン防災」の考え方を、新型コロナウイルスへの対応にも応用してはどうだろう。

 すでに取り組みを始めたところもある。いざという時に、あわてず、必要な措置を効果的に講じられる態勢をめざす。

 タイムラインとは、時間軸に沿って、たとえば台風の接近、上陸、通過の局面別に行動計画を作成。庁内の各部署がどう動き、住民に何を促すかなどを定め、減災につなげる試みだ。

 大阪府河南(かなん)町は、土砂災害のタイムラインを元に感染症用の行動計画を作り、「府下市町村で発生」「町内で発生」「複数発生」など8段階に分けて仕事の流れを整理した。段階ごとに「応援職員の要請」「時差出勤の検討」「中小企業への休業補償の周知」などの業務と担当部署をまとめた。

 5段階の計画表を作った長野県飯田市は、現在をレベル3の「市内で複数の患者発生」と位置づけ、高齢者施設での感染確認に備えてマスクの配布などに着手した。さらに「役所や企業で集団感染」のレベル4に向けて、職員の班ごとの分散勤務を念頭に準備を進めるという。

 三重県紀宝(きほう)町、福岡県飯塚市も同種の計画を持っている。

 緊急事態宣言が全国に拡大されてからは、感染者がいない自治体でも、3密解消の広報に加え、休業要請や給付金支給に関する問い合わせへの回答など、多くの仕事に追われる。

 タイムラインどころではないというかもしれないが、ひとたび感染が確認されれば、病床の確保や医療従事者の支援など、やるべきことは一気に増える。間違えれば地域医療の崩壊を招きかねない。課題と対策を事前に整理しておくことは、混乱の回避に必ず役立つ。

 作りっぱなしにせず、事態の動きに応じて修正を重ね、能力を高めておくことも必要だ。

 忘れてならないのは、感染と地震・洪水などの災害が同時に起きたときへの備えだ。

 医師らでつくる避難所・避難生活学会は先ごろ、「自治体災害対応担当者へ」と題する文書を発表した。避難所で3密を避ける方法や、都道府県による市町村の垣根を越えた分散避難計画の策定などを提言している。感染拡大の防止と災害時の人命救助とを両立できるように、転ばぬ先の杖で計画を練ることを怠ってはならない。

 人を介して広がる感染症には、風雨とは別次元の予測の難しさがある。だからこそ、想像力を働かせることが重要だ。

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