(社説)休業手当 広く行き渡る工夫を

社説

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 仕事を休む全ての人に生活保障が届くようにする。その原点を見失わないようにしたい。

 雇い主の都合で働き手を休ませる場合、平均賃金の6割以上を休業手当として払うことが、労働基準法で義務づけられている。この支払い義務が、新型コロナウイルス緊急事態宣言のもとで従業員を休ませる時にもあるのかないのか、大きな論争になっている。

 天災などの不可抗力の際は支払い義務はないとされる。今回の緊急事態宣言や、自治体による自粛の要請・指示が、この不可抗力に当たるのかどうか、国会でも議論になった。

 法律の解釈をめぐっては、専門家の見解も様々だ。しかし、少なくとも緊急事態宣言だけを理由に義務を免れないことは、加藤厚生労働相が国会などで明言している。

 にもかかわらず、労働組合などの相談窓口には、休業手当を払ってもらえないという訴えが寄せられている。緊急事態宣言下だから手当は出さなくてもよいという、誤った考えが広がらぬよう、厚労省は丁寧に説明するべきだ。

 忘れてならないのは、法的な支払い義務の有無にかかわらず、会社が払う休業手当には国から「雇用調整助成金」が出る、ということだ。

 助成金の対象は、新型コロナに対応するための特例で、雇用保険に入っていない短時間のパート労働者や新入社員にも広げられた。解雇をしないことを条件に、助成率も中小企業で最大9割まで引き上げられた。

 その趣旨を生かすには、雇い主が助成金を活用しやすくする一層の工夫も必要だ。

 例えば、助成金は手当を払った後で補填(ほてん)する仕組みのため、当座の資金を確保しなければならない。一部だが事業主負担も残る。緊急融資などによる資金繰りの支援や、助成率のさらなる引き上げが検討課題だ。

 各地の労働局やハローワークで受け付けた相談は13日までに11万8千件にのぼるが、17日までに申請は985件、支給決定は60件にとどまる。

 厚労省は、申請書類の記載項目を半減し、通常2カ月とされる支給までの期間を1カ月以内にするとしているが、多くの相談に人手をとられ、対応が追いついていないのが現状だ。OBなどを活用した職員の増員も進めているが、地域の社会保険労務士に相談業務の一部を担ってもらうことも考えてはどうか。

 中小企業の経営者や働き手の中には、そもそも制度についてよく知らない人もいる。周知に努めるとともに、働き手の声を受け止め、会社側に取り組みを促す工夫も考えねばならない。

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