社員が未払い残業代などをさかのぼって会社に請求できる期間(時効)は「2年」までとする規定を「当面3年」に延ばす改正労働基準法が27日、参院本会議で賛成多数で可決され、成立した。施行日の4月1日に支払われる賃金から適用され、実際に2年を超えてさかのぼって請求できるのは2022年4月以降だ。

 同じく4月1日施行の改正民法で、お金をさかのぼって請求できる期間が「原則5年」に統一されるのに合わせた見直し。請求できる期間が延びると、働き手はより多くの未払い賃金を請求できる。

 いまの民法では賃金請求権の時効は1年だが、労働者を守るために民法に優先するルールとして労基法の規定で「2年」と定めた経緯がある。今回の見直しでは、民法が「5年」に延長されたのに対し、労基法の規定は1年しか延長されず、働き手を守るためにある労基法で定めた期間が民法より短くなった。

 時効期間が当面3年になったのは企業への配慮からだ。労使代表者らによる厚生労働省の審議会は昨年末、改正民法に沿って時効を「原則5年」としつつ、企業が賃金台帳などの記録を保存する事務負担が増すなどとして「当面3年」と結論づけた。厚労省は「5年後に改めて検討する」とするが、労使が合意する保証はなく、5年に移行できるかは不透明だ。

 日本労働弁護団の梅田和尊事務局長は「民法より労基法の規定が短くなるのは理論的にもおかしい」と批判する。企業が正当に賃金を払えば「時効が5年でも争いは起きないはずだ」といい、企業側の事務負担の増加は時効を3年とする理由にはならないという。

 今回の制度改正について、茨城県内の運輸会社に勤める男性(36)は「払いたくないという企業側の言い訳にしか聞こえない」と憤る。男性は16年、約10人の同僚らと未払い賃金を会社に求めて水戸地裁土浦支部に裁判を起こし、いまも訴訟は続く。男性が入社したのは提訴から10年ほど前で、入社以来、未払いが続いたと記憶しており、「住宅購入の頭金になるくらいの未払いがあったはずだ」と話す。

 だが、提訴時に請求できたのは、労基法によってさかのぼって請求できる期間(時効)に沿った約2年分にとどまる。男性は今回の見直しで請求期間が延びる点は前向きにとらえつつ、「そもそも賃金は100%払うのが筋だ」という。(滝沢卓、内山修)

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