(社説)新型コロナ対策 不安に応える発信を

社説

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 都市部を中心に経路のわからない新型コロナウイルス感染者が見つかっており、患者の爆発的増加がいつ起きてもおかしくない――。政府の専門家会議がそんな見解をまとめた。

 懸念された北海道では拡大が抑えられているものの、海外からの帰国者の感染例も相次ぎ、水際対策の再強化を余儀なくされる状況だ。さらなる長期化に備えた態勢の構築が必要だ。

 まず急ぐべきは、対策の最前線を担う地域の保健所へのテコ入れである。ウイルス検査や入院先の手配、感染経路の追跡、電話相談への対応など、業務は多岐にわたる。過重労働が続けば疲弊し、ミスも起きる。

 非常勤者を含めスタッフの増強を図るとともに、可能な業務から外部委託も進めるべきだ。政府・自治体は必要な措置や支援を惜しんではならない。

 丁寧で迅速な情報発信の大切さは言うまでもない。

 おととい公表された専門家会議の見解は、データを示しながらなるべく平易な言葉を使い、市民にひろく呼びかける内容になっている。夜遅くに始まった会見も約2時間に及んだ。それでも、詳しい説明や確認を望む声は今後も続くだろう。

 たとえば見解は、感染状況に応じて地域を三つに分け、収束傾向にある地域や感染者の出ていない地域では、屋外でのスポーツや観戦、文化・芸術施設の利用など、感染リスクの低い活動から自粛を段階的に解除する考えを示した。

 方向性に異論はないが、主催者側とすれば、地域とはどの範囲か、感染状況を誰に、どう確認すればいいのか、そのイベントに適したリスク低減策として何が考えられるかなど、相談できる先がほしいだろう。

 専門家会議の機能や人員を拡充し、科学的分析力とあわせ、情報の収集力・発信力を強化することが求められる。

 政府全体で顔をしっかり見せて、最新の知見や対策をきめ細かく提示し続けることが、人々の理解を得るうえで不可欠だ。説明を嫌い、厳しい質問から逃げてきた安倍政権だが、健康に関わり、社会・経済生活を大きく揺るがしているこの問題に、これまでの姿勢は通じない。

 その意味で、きのうの政府対策本部での首相の対応には疑問がある。専門家会議の見解を受け、学校については再開に向けて指示を出したものの、同じく自らの唐突な要請で始まったイベントの自粛に関しては明確な言葉で語らなかった。責任をどう自覚しているのだろうか。

 専門家が学識に基づいて検討し、その成果を踏まえて政治が判断し、説明する。どれか一つが欠けても事は成就しない。

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