(社説)感染症と経済 国際協調が試される

社説

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 日米の中央銀行が一段の金融緩和に踏み込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済の先行き不安が広がる中で、各国の政府・中央銀行は金融市場の安定を保ち、実体経済の下支えを図らねばならない。

 米連邦準備制度理事会は日曜に緊急会合を開き、政策金利を1%幅下げてゼロ金利にすることを決めた。量的緩和も再開する。3日の0・5%幅の緊急利下げに続く措置だ。米日欧など6中央銀行が協調し、ドル供給を拡大することも発表した。

 日本銀行も昨日、政策決定会合を前倒しで招集し、緩和の強化を決めた。企業向け金融の支援を強めるほか、上場投資信託や社債、不動産投資信託の買い入れ額を増やし、市場に潤沢に資金を供給するとしている。

 欧米での感染拡大が深刻化し、市場参加者の動揺が続く中で、中央銀行としてとれる手段を総動員したといえる。将来的に一定の副作用を伴う可能性のある政策を含むにせよ、各国が国境を閉ざし、経済活動の大幅な縮小が懸念される中では、やむを得ない判断だろう。今後も各国中央銀行は足並みをそろえ、市場への資金供給に万全を期し、信用不安の拡大や金融危機の発生を防ぐ必要がある。

 一方で、経済全体の刺激策としては、日米欧ともに金融政策の弾はほぼ撃ち尽くしたに近い。今後のマクロ経済を支える政策は、財政が中心にならざるを得ない。

 新型コロナの経済への影響は、当初中国への輸出減や海外観光客の減少が想定の中心だった。しかし、流行の世界的な拡大で、各国で国境封鎖や集会・外出の禁止、レストランなどの閉鎖といった措置が相次ぎ、経済活動も抑制せざるをえない事態に至っている。

 消費者や企業の心理悪化を含めて、需要の落ち込みが懸念される一方で、防疫のために供給面の制約がさらに強まる可能性も高い。需給の縮小が悪循環に陥らないような対策が望まれる。休業を強いられる企業の資金繰りや働き手の所得を維持する手立てを実態に合わせて拡大することに加え、低所得層の収入の補償など実効性の高い措置を選び、十分な規模で機敏に実行すべきだろう。

 問題の根源である感染拡大は終息へのシナリオが見えず、経済面の不透明感は通常の景気後退以上に深い。場合によっては相当の長期戦になることも覚悟し、各国のデータや経験の共有と、医療・生活の両面での弱者保護の徹底が求められる。

 感染拡大を抑えるためにも、経済機能を維持するためにも、危機に際して国際協調を保つことが不可欠だ。

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