(社説)新型コロナ対策 くらしの不安に応えよ

社説

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 この2週間、安倍首相が唐突に打ち出したイベントの自粛や一斉休校の要請で、くらしを取りまく環境は激変した。

 要請は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的というが、国民の不安は募る。

 政府が決めた緊急策の第2弾では、仕事を休まざるを得なかった人への当面の補償や資金繰り支援の拡充が柱になった。首相は「雇用の維持と事業の継続が最優先」と強調するが、自ら打ち出した方針による影響の大きさも踏まえた、後追いの策の色彩が濃い。

 国が支出する4308億円のうち2463億円は、臨時休校にともなう対策にあてる。従業員に仕事を休んだ親がいる企業向けの助成金に加え、この制度の対象とならないフリーランスには、一定の条件のもと1日4100円を支援し、最大20万円の緊急貸し付けもおこなう。中止になった給食の費用負担や農家や業者への支援も、国のお金で面倒をみる。

 なお解消しないマスク不足には、布製2千万枚を国が買い上げて介護施設などに配り、転売は罰則つきで禁じる。1・6兆円規模の中小企業などへの資金繰り支援では、実質の無利子融資なども用意した。

 だが、休校の余波を受けた人たちへの対応と比べると、そのほかの要因で売り上げを失った事業者などへの支援は、手薄な感が否めない。

 日本商工会議所の調査では、中小企業の6割超が売り上げや受注、客数の減少に直面する。さらに打つべき手はないか、政府は目配りを続けるべきだ。

 そして忘れてならないのは、なお先を見通せない不安を、国民が抱えていることだ。

 首相は政府の会議で、イベントの自粛を今後おおむね10日間程度は続けるよう求めた。しかし、どのような条件がそろえばイベント自粛や休校の要請を解くのかといった、国民が最も知りたいことへの具体的な言及はなかった。

 世界で感染が広がり、経済活動が停滞するなか、金融市場では不安定な動きが続く。株価の下落で消費者心理が冷え込み、円高で企業の収益が押し下げられれば、景気がさらに落ち込む悪循環に陥りかねない。

 専門家会議からは、流行が長期化する可能性が指摘された。

 この先のくらしへの対策も経済全般の見通しについても、政府の情報発信が欠かせない。感染拡大を防ぎながら、経済活動をどう保つのかの考え方を示すことも、求められる。

 首相はこれまで打ち出した方針の根拠とあわせ、繰り返し会見を開くなどして、丁寧に説明する必要がある。

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