(社説)休校の決断 重みに見合う説明を

社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、安倍首相がおととい表明した全国すべての小中高校などへの休校要請が、困惑と混乱を広めている。

 感染防止のためにできる措置を迅速にとることは危機管理として必要だろう。ただ、政府の専門家会議で議論にもなっていない休校を、突然、全国一斉に求めることが国民生活に与える影響は、あまりに大きい。

 首相はきのうの衆院予算委員会で「最後は政治が全責任をもって判断すべきものと考え、決断を行った」と、自らの判断であることを強調した。

 そうであるならば、異例の措置に踏み切った理由と、不安をかかえる人たちにどのような対応策を政府として用意しているのかを、首相自身の口から、国民に向けて丁寧に説明することが不可欠である。

 首相が、3月2日からの一斉休校を要請する方針を表明したのは、27日夜の対策本部でのことだった。

 全国の小中高・特別支援学校には、あわせて1300万人の子どもたちが通う。学校運営に携わる自治体や教職員、保護者やその勤務先の関係者まで含めれば、対応をそれぞれ考えねばならない人の数は膨大だ。土日を含む、わずか3日間のうちに答えを出せと言われても、「どうしていいのかわからない」というのが実情ではないか。

 打ち切られた授業の遅れをどう取り戻すのか。期末試験や卒業式をどうすればいいのか。低学年の子を残しては働きに出られない保護者は仕事を休めるのか。その間の賃金はどうなるのか。課題は山積みである。

 首相が方針を表明した時点で文部科学省内で知らされていたのは、一部の幹部だけだった。全国の教育委員会への連絡はその後に始まった。学童保育を受け持つ厚生労働省との調整など、具体策は詰めきれないままの見切り発車だった。

 政府の専門家会議は24日に出した見解の中で「1~2週間が急速な感染拡大が進むかの瀬戸際」との見方を示したが、休校には触れていない。翌日に政府が発表した基本方針でも、臨時休校の適切な実施に関して都道府県から要請するとの内容が入っていただけだ。

 専門家会議のメンバーからは「(一斉休校は)諮問もされず、提言もしていない。効果的であるとする科学的根拠は乏しい」との声が漏れる。

 対策は時間との戦いだし、トップによる果敢な決断が必要なときもあるだろう。首相は遅ればせながら、きょう、記者会見を開くという。国民の不安に正面から答えられなければ、政治判断への信任は得られまい。

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