(社説)森友学園問題 忘れるわけにはいかぬ

社説

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 行政の公平性がゆがめられたのでは、との疑念はいまも消えていない。経緯を検証できる公文書は、改ざんや廃棄が重ねられ、国民の知る権利は大きく損なわれた。

 学校法人森友学園にまつわる一連の問題は、民主主義の根幹を揺るがしてきた。そして、首相主催の「桜を見る会」に関しても、同じことが突きつけられている。ともに真相の解明と責任追及を続ける必要がある。

 大阪地裁できのう、森友学園の前理事長夫妻が国の補助金などをだまし取ったとされる事件の判決があり、有罪が言い渡された。今後控訴が予想され、刑事責任の有無の確定にはなお時間を要しそうだ。

 忘れてならないのは、この裁判では正面から争われなかった多くのことがらである。

 学園に国有地を売却するにあたり、財務省はなぜ鑑定価格から8億円余、9割近い値引きをしたのか。他の売却事例では金額を公表しているのに、このケースだけ当初開示を拒み、さらに決裁文書などの改ざん、廃棄に手を染めた理由は何か。

 学園が開校をめざしていた小学校の名誉校長には安倍首相の妻昭恵氏が就いており、公文書からは、取引にかかわった複数の政治家らとともに、昭恵氏の名が削除されていた。首相側への配慮が背景にあったのでは、との疑いは残ったままだ。

 改ざんの責任をとって、財務省で理財局長を務めた佐川宣寿氏が辞職し、他の多くの職員が処分された。だが麻生財務相は続投し、国会で「私や妻が関与していれば、首相も国会議員もやめる」と答弁した首相は、その後言い分を変え、うやむやにすることを図った。そんな「トカゲのしっぽ切り」の過程で、財務省近畿財務局職員の自殺という悲劇も生まれた。

 「桜を見る会」をめぐっても、森友問題と同じような構図が浮かびあがる。

 会の招待者は第2次安倍政権の発足以降、年々膨らみ続け、首相の後援会関係者や昭恵氏が推薦した知人が大勢含まれていた。招待者名簿に関し、公文書管理法と関連規則に反する対応が次々と発覚。保存期間を管理簿への記載義務がない「1年未満」に変更し、短期間で廃棄した事実も明らかになった。

 内閣府の歴代人事課長が厳重注意処分になったが、「見る会」担当の菅官房長官ら政治家は誰も責任をとらない。首相も説得力を欠く国会答弁を重ねるばかりで、調査を求める野党の声を頑としてはねつける。

 愚弄(ぐろう)されているのは国会であり、そこに代表を送っている国民だ。森友問題は終わっていないし、終わらせてはならない。

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