(社説)新型肺炎対策 国内流行想定し態勢を

社説

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 中国との接点がはっきりせず、感染経路が不明な新型コロナウイルスの患者が、各地で見つかった。今後、国内で流行が広がる可能性がある。そんな事態になっても被害を最小限に抑えられるように、態勢の整備を急がなくてはならない。

 最も大切なのは、重症患者を見逃さず、確実に治療につなげることだ。指定医療機関のベッドには限りがある。一般の病院でも患者が入院できるように準備を進め、軽症者は自宅療養に切り替えるといった措置も必要になるかもしれない。

 あわせて初動の対応も問われる。今回のウイルスの特徴か、不調を訴える人を診察しても当初は感染に気づかず、その後、確認までに相当の時間が経過しているケースが目につく。この間に他人に伝播(でんぱ)してしまう恐れが高い。積極的に感染を疑い、処置する必要がある。

 憂慮すべきは医療関係者への感染だ。和歌山県で感染が確認された外科医は、発熱後も解熱剤を服用して仕事をしていた。きのうになって、勤務先の病院の入院患者が感染していることがわかった。外科医との接点はないというが、院内感染が起きている疑いがある。経路の解明を急がなければならない。

 また、横浜港に停泊する大型クルーズ船では検疫官が感染した。マスクの使い方や手の消毒に不適切な点があったとされ、基本動作の徹底が求められる。

 感染が疑われる人への対処に当たる医師や看護師、検疫官、保健所職員らの負担は、今後さらに増えることが予想される。ハードワークが続けば体力を消耗し、注意力も散漫になる。中国・武漢の例を見ても、医療側の安全が保たれなければ、状況は悪化の一途をたどる。

 おととい決まった国の緊急対策には、ウイルス検査体制の拡充に加え、医療用マスクや医薬品の供給確保が盛り込まれた。政府や自治体は、対策が長期に及ぶことを想定して、病院任せにせず、十分な要員と物資の確保に努めてもらいたい。

 クルーズ船の扱いも大きな課題だ。政府は、80歳以上で持病があるなど、一定の条件を満たす乗客の下船を認め、用意する宿泊施設に滞在させることにした。感染者は日々増え、船内で新たな広がりが起きている可能性も否定できない。

 疑いのある者の入国を認めず水際で阻止するという方針で臨んだため、結果として対応が遅れたと批判されてもやむを得ない。一人ひとりの健康状態や希望を踏まえた、柔軟な方策に切り替えるときだ。外国人の乗客乗員も多い。情報を丁寧に発信し、これ以上、不安や不信を広げないことが肝要だ。

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