(社説)辺野古移設 不都合な現実 直視せよ

社説

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 不都合なデータに目をつぶり、埋め立て工事を止めようとしない。「辺野古ありき」で突き進む政府の強権ぶりが、また明らかになった。

 沖縄・米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古沖の軟弱地盤が、これまで政府が改良工事可能としてきた海面下70メートルよりも深い可能性を示すデータが存在していた。

 埋め立て予定海域の東端で、護岸が建設される地点。防衛省の委託を受けた業者が、海底の土の種類を確認する「物理試験」のために採取した試料を使って地盤強度も調べたところ、70メートルより深い部分で6段階中2番目の軟らかさだった。

 防衛省は、別の目的で採取された試料であり、試験も船上で行う簡易なものだったとして、地盤強度を調べる「力学試験」とは認められないとの立場だ。河野太郎防衛相は一昨日の衆院予算委員会で「力学試験でも何でもない」「設計変更には反映されない」と繰り返した。

 いくら簡易的な方法によるとはいえ、工事の大きな障害となりうるデータが示された以上、改めてボーリング調査を行い、強度を正確に判定するのが当然ではないのか。

 作業船で地盤改良工事をできる深さは70メートル程度とされる。防衛省は150~750メートル離れた別の3地点の調査結果をもとに、ここでも70メートルまでの工事で足りるという。護岸の下という重要な地点の調査をなぜ避けるのか。頑(かたく)なな姿勢は、軟弱地盤の深刻さを認めたくないためと見られても仕方あるまい。

 明らかになったデータは、防衛省が昨年3月に国会に提出した報告書の巻末資料の中に英文で掲載されていた。当時の岩屋毅防衛相らは、この地点で調査が行われていたこと自体を否定しており、数値は事実上伏せられたままだった。

 政府は昨年末、軟弱地盤対策を織り込んだ総工費の見直しを公表した。従来想定の約2・7倍にあたる約9300億円。事業完了までの工期は12年と見積もられ、普天間返還は早くても30年代半ばへと大幅にずれこむ見通しとなった。軟弱地盤が想定以上に深ければ、工費や工期がかさむだけでなく、技術的な可能性にも疑問符がつく。

 政府は14~16年の調査で軟弱地盤の存在を把握しながら公表せず、埋め立ての土砂投入を始めた後に事実を認めた。沖縄で繰り返し示された「辺野古ノー」の民意を無視する強引な手法は、もはや限界にきている。

 「マヨネーズ並み」の地盤が広がる辺野古沖を「適地」とする計画の破綻(はたん)は明らかだ。政府は速やかに工事を止め、一から出直すべきである。

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